2010年04月09日
ウケル

 私の母は英語教師である。

その母が32年の教員生活にピリオドを打つことになり
記録VTRを撮るため、勤め先の神戸の高校を訪れた時のことだ。
私は高校生に自己紹介をした。


 玉井 「めんこいテレビの玉井新平です」

 女子高校生 「うけるー!」


 一瞬、時が止まった。どういう意味?
聞こうと思ったが、「KY」な男みたいでやめた。


  「だよねー」
とっさに口から出た言葉は空々しく教室に響いた。

 「何がうけたのか?」

 家に帰って自問自答した。
おそらく「めんこいテレビ」という聞きなれない言葉に対して
おもしろいという意味で言ったのだろうと結論づけた。

 しかし、自己紹介して
返ってくる言葉が「うける」とは・・・

気分を変えさっそく
 この言葉を使うチャンスをうかがった。

ある飲み会のことだった。女性が言った。

  「私、太ったかな・・・」

  玉井「うけるー」


  場が凍りつき
  突き刺さるような視線が集まる。


     ウケナカッタ・・・

投稿日時:2010年04月09日 17:50 ページを表示
2009年12月29日
箱(後編)


 その夜、洋子は寝付けないでいた。
原因ははっきりしている。
家を建てて10年、そろそろ現れるころだと思っていたが・・・
この前2匹を仕留めたが、必ず生き残りがいる─
確たる殺意を胸に抱き、目を閉じたその瞬間、はっとなって飛び起きた。
背筋が凍る、忘れもしないあの音が聞こえたのだ。
丸めた雑誌を手に、すり足で台所に近づく。
昔は剣道でならした腕、一撃で仕留める自信があった。
暗闇に目が慣れた頃、
箱にいた黒い影を捉え、会心の一撃を見舞った。

 タクヤはある決意を抱いていた。
心臓の鼓動が頭に響くのが分かるが、驚くぐらい冷静に行動していた。
自分のやれることはこれしかない─
迷うことなく、一歩を踏み出した。
足にからみつき、足があがらない。分かっていたことだ。
タクヤは鋭い歯で自分の足をかみちぎった。
激痛が走る。しかし、次の一歩を踏み出すのに迷いはなかった。
タカシの前にたどりつくころには 
全ての足がなくなっていた。

「兄ちゃん」
弱々しい声を出すタカシに近寄り
タクヤは、弟の足についた粘着を口でとり始めた。
そして、最後の力を振り絞り、タカシに伝えた。
「俺の体に乗れ、俺の背中から飛べ」
タカシは言われた通り背中に乗り、ジャンプした。
「兄ちゃん、脱出したよ、兄ちゃん・・・・」
タカシは振り返り、何度も叫んだ。
しかし、タクヤが返事することはもうなかった。

翌朝、洋子は朝食の準備をしていた。
いつもと変わらない日常─
真っ白なテーブルクロスの上には卵焼き、ベーコン、お味噌汁。
台所の隅には新しい ごきぶりホイホイ。
昔から続く人間とゴキブリの知恵比べ─

それも最近は見なくなり、
代わりに快適な高層マンションやビルが目につくようになった。

近代化を象徴するこの摩天楼も
「巨大な箱」なのかもしれない。

投稿日時:2009年12月29日 14:01 ページを表示
2009年12月16日
箱(前編)

この度は ブログ小説に挑戦しました。
稚拙ですが、暇つぶしにお読みください。


 「足がひっついてとれない」
二男、タカシの悲鳴が台所に響いた。
長男、タクヤは目の前で起きていることが
どういうことを意味するか瞬時に理解し、青ざめた。

深夜、台所に侵入した時
あたりに漂う甘い香りがタカシの理性を吹き飛ばしたのだった。

「あんなに気をつけろと言ったのに・・・」
タクヤの目の前には2年前の悪夢が蘇るあの箱があった。
親父とお袋が殺されたのもここだった。

タクヤには、喧嘩無敵の親父と優しいお袋がいた。
仲の良い自慢の両親だった。

その日はいつものように台どころの隅を歩いていた時だった。
ふいに親父とお袋の、嗅覚がご馳走のありかをキャッチした。
臭いの発信源は、紙製の箱の中だった。
用心深い両親にしては珍しく大胆になっていた。
このところ、みんなが飢えていたのだ。
ネバネバした粘着が足にからみつき、次第に身動きがとれなくなった。
「タクヤ来るな」
そう叫ぶ親父とお袋の声に 事の重大さを知り、逃げるようにして帰った。

翌朝、タクヤは台所に親父とお袋を探しに行ったがどこにもいなかった。
代わりにあの、悪魔のような箱だけがおいてあった。

あの悪夢が再び繰り返されうとしていた。
「冗談じゃない。タカシは生まれて間もない
まだ、ケーキやジュースの美味しさだって知らない」
おびえきったタカシをなだめ、タクヤは必死で脱出方法を考えた。
タイムリミットは人間が起きてくる夜明けまで。
日の出まで1時間を切っていた。    

                 (続く)

投稿日時:2009年12月16日 17:40 ページを表示
2009年10月23日
天然ボケ

 関西のお笑いの核 「ボケ」と「つっこみ」

自分にあてはめてみると間違いなく「ボケ」の方になる。

まわりからよく「天然ボケ」なんて言われるからだ。

そして、ボケ役は「天然」と言われる人が多い。

しかし、「天然」て何だろう?

「人為の加わらない自然のままの状態」(広辞苑)

要は自然のまま─

聞こえは良いが、天然はリスクを伴う。

 先日、番組で女性の衣装「サロペット」を

何故か「トヨペット」と聞き違え、御叱りをうけた。

帰りに中津川によった。

天然のサケが産卵のため遡上していた。

流れに逆らい力強く泳ぐ姿に

    社会という荒波にもまれる自分を重ね合わせた。

不思議と自分が格好良く思えてきた。


      これも「天然」のなせる業か─

投稿日時:2009年10月23日 12:39 ページを表示
2009年09月16日
部屋の掃除


先日、久しぶりにアパートの掃除をした。

非常に迷ったのが捨てるもの─

以下 迷ったものを挙げてみる。

①炊飯器→ 一切炊事しないため
②体重計→ 結果を見ても努力しない
③風呂のタライ→ 使うのはシャワーのみ
④育毛剤→ 使うと臭い

 どれも、環境に良くなさそうものばかりなので
ひとまず共存することにした。
それにしても、必ず使うだろうと思ったものが
要らないものになっていることに気付かされる。
これを「無駄」というのだろうが、なかなか
改善されないのは、何故なのだろう。

 「生活してみて足りないと気づいたものを買う」
こういう考え方が必要なのかな─

そう結論づけ、床についた。
翌朝、トイレットペーパーが足りないことに気づいた。

気づくのが遅かった─。

投稿日時:2009年09月16日 16:39 ページを表示