その夜、洋子は寝付けないでいた。
原因ははっきりしている。
家を建てて10年、そろそろ現れるころだと思っていたが・・・
この前2匹を仕留めたが、必ず生き残りがいる─
確たる殺意を胸に抱き、目を閉じたその瞬間、はっとなって飛び起きた。
背筋が凍る、忘れもしないあの音が聞こえたのだ。
丸めた雑誌を手に、すり足で台所に近づく。
昔は剣道でならした腕、一撃で仕留める自信があった。
暗闇に目が慣れた頃、
箱にいた黒い影を捉え、会心の一撃を見舞った。
タクヤはある決意を抱いていた。
心臓の鼓動が頭に響くのが分かるが、驚くぐらい冷静に行動していた。
自分のやれることはこれしかない─
迷うことなく、一歩を踏み出した。
足にからみつき、足があがらない。分かっていたことだ。
タクヤは鋭い歯で自分の足をかみちぎった。
激痛が走る。しかし、次の一歩を踏み出すのに迷いはなかった。
タカシの前にたどりつくころには
全ての足がなくなっていた。
「兄ちゃん」
弱々しい声を出すタカシに近寄り
タクヤは、弟の足についた粘着を口でとり始めた。
そして、最後の力を振り絞り、タカシに伝えた。
「俺の体に乗れ、俺の背中から飛べ」
タカシは言われた通り背中に乗り、ジャンプした。
「兄ちゃん、脱出したよ、兄ちゃん・・・・」
タカシは振り返り、何度も叫んだ。
しかし、タクヤが返事することはもうなかった。
翌朝、洋子は朝食の準備をしていた。
いつもと変わらない日常─
真っ白なテーブルクロスの上には卵焼き、ベーコン、お味噌汁。
台所の隅には新しい ごきぶりホイホイ。
昔から続く人間とゴキブリの知恵比べ─
それも最近は見なくなり、
代わりに快適な高層マンションやビルが目につくようになった。
近代化を象徴するこの摩天楼も
「巨大な箱」なのかもしれない。
この度は ブログ小説に挑戦しました。
稚拙ですが、暇つぶしにお読みください。
「足がひっついてとれない」
二男、タカシの悲鳴が台所に響いた。
長男、タクヤは目の前で起きていることが
どういうことを意味するか瞬時に理解し、青ざめた。
深夜、台所に侵入した時
あたりに漂う甘い香りがタカシの理性を吹き飛ばしたのだった。
「あんなに気をつけろと言ったのに・・・」
タクヤの目の前には2年前の悪夢が蘇るあの箱があった。
親父とお袋が殺されたのもここだった。
タクヤには、喧嘩無敵の親父と優しいお袋がいた。
仲の良い自慢の両親だった。
その日はいつものように台どころの隅を歩いていた時だった。
ふいに親父とお袋の、嗅覚がご馳走のありかをキャッチした。
臭いの発信源は、紙製の箱の中だった。
用心深い両親にしては珍しく大胆になっていた。
このところ、みんなが飢えていたのだ。
ネバネバした粘着が足にからみつき、次第に身動きがとれなくなった。
「タクヤ来るな」
そう叫ぶ親父とお袋の声に 事の重大さを知り、逃げるようにして帰った。
翌朝、タクヤは台所に親父とお袋を探しに行ったがどこにもいなかった。
代わりにあの、悪魔のような箱だけがおいてあった。
あの悪夢が再び繰り返されうとしていた。
「冗談じゃない。タカシは生まれて間もない
まだ、ケーキやジュースの美味しさだって知らない」
おびえきったタカシをなだめ、タクヤは必死で脱出方法を考えた。
タイムリミットは人間が起きてくる夜明けまで。
日の出まで1時間を切っていた。
(続く)
関西のお笑いの核 「ボケ」と「つっこみ」
自分にあてはめてみると間違いなく「ボケ」の方になる。
まわりからよく「天然ボケ」なんて言われるからだ。
そして、ボケ役は「天然」と言われる人が多い。
しかし、「天然」て何だろう?
「人為の加わらない自然のままの状態」(広辞苑)
要は自然のまま─
聞こえは良いが、天然はリスクを伴う。
先日、番組で女性の衣装「サロペット」を
何故か「トヨペット」と聞き違え、御叱りをうけた。
帰りに中津川によった。
天然のサケが産卵のため遡上していた。
流れに逆らい力強く泳ぐ姿に
社会という荒波にもまれる自分を重ね合わせた。
不思議と自分が格好良く思えてきた。
これも「天然」のなせる業か─
先日、久しぶりにアパートの掃除をした。
非常に迷ったのが捨てるもの─
以下 迷ったものを挙げてみる。
①炊飯器→ 一切炊事しないため
②体重計→ 結果を見ても努力しない
③風呂のタライ→ 使うのはシャワーのみ
④育毛剤→ 使うと臭い
どれも、環境に良くなさそうものばかりなので
ひとまず共存することにした。
それにしても、必ず使うだろうと思ったものが
要らないものになっていることに気付かされる。
これを「無駄」というのだろうが、なかなか
改善されないのは、何故なのだろう。
「生活してみて足りないと気づいたものを買う」
こういう考え方が必要なのかな─
そう結論づけ、床についた。
翌朝、トイレットペーパーが足りないことに気づいた。
気づくのが遅かった─。
何回、赤提灯で飲んだかな?
仕事での意見をぶつけ合い喧嘩したよな。
二度泣き橋で本気で泣いたやつもいたよな。
6畳一間で8人が雑魚寝しこともあったね。
警察担当記者として出会ったクラブの同期たち─
ほとんどが東京に戦いの場を移したね。
どんな現場にいても盛岡の思い出が
みんなをつないでくれるよな。
次に会う時は、どんな年の重ね方しているかな?
どんな家庭を築いているのかな?
いつかまた、盛岡で昔話に花をさかそうな。
岩手公園はもう紅葉が始まっているよ。
あれから6回目の秋なんだね。