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◆第33回 ミュージカル「北の燿星アテルイ」(23.september.2002)

○ミュージカル「北の燿星アテルイ」
2002年9月11日 岩手県民会館大ホール

  僕は1957(昭和32)年生まれだが、子供の頃にはまだ「日本のチベット」という蔑称が生きていた。今はもう死語となった(と思う)が、これは東北地方を指している。
 この差別と偏見は、我々東北人に強烈な劣等感を植えつけた。今、東北を「日本のチベット」などと言う人がいたら、逆に軽蔑されるだけだが、しかし、哀しいことにまだ多くの東北人が心のどこかに根強く劣等感を持ちつづけているような気がする。

 このミュージカルは高橋克彦氏の『火怨』が原作だ。「まつろわぬ民」エミシのリーダーに選出されたアテルイが、暴虐の限りを尽くして侵攻を繰り返す大和朝廷に対し「エミシも同じ人間だ」と抵抗する。その闘いは20年以上にも及んだ。朝廷側のリーダー坂上田村麻呂とアテルイは、幼い頃に北上川で遊んだ仲だった。二人のあいだには友情と呼んでもいい感情が芽生える。だが、中央集権化を目指す為政者にとって二人の友情など無力だった。
 大和朝廷とエミシの闘いが繰り広げられる一方、田村麻呂とアテルイ、そして佳奈とのあいだにラブストーリーが生まれる。
 以上が大雑把なストーリーだ。
 幕開けから、僕は引き込まれた。激しい動きによる群舞、物語の始まりに相応しい合唱、そのいずれもが輝いていた。安達和平(アテルイ)、岡村雄三(坂上田村麻呂)ら存在感のあるキャスト(アテルイが原作者にそっくりなのは驚いたが)、甲斐正人による音楽が素晴らしい。そして、朝倉摂による美術と相まって、切れ味のいいテンポで進む。随所で効果的に使われる太鼓も印象深い。太鼓といえば威勢のいいものと思われがちだが、怨念や深い哀しみも表現できるということをこの舞台で知った。秀逸である。また、丸山育子(佳奈)の歌は説得力がひときわ富んでおり、彼女が出てくるたびに僕の涙腺はゆるんだ。

 このミュージカルは二重の意味を持っている。
 まず、アテルイが東北人の誇りを持って、中央と闘ったという歴史的事実を教えてくれる。
 もうひとつ、これだけクオリティの高い舞台を、わらび座という東北の劇団がつくりあげ、しかも昨夏から1年間ものロングラン公演をつづけてきたことを挙げておきたい。アテルイも立派なら、わらび座もそれに負けないくらい立派なことを成し遂げている。
「大変なものを観てしまった−−」
 僕はしばらく座席から立ち上がれなかった。
 アテルイが守ろうとした東北を誇りに思うと共に、こんなに素晴らしいミュージカルが生まれたことを僕は誇りに思う。

◆このごろの斎藤純

〇第三回QOLフォーラム『 ゆっくりくらそう、いわて圏 』で岩手大学の三宅諭先生(都市・地域計画)と対談をします。ユニークな分科会もありますので、みなさんお誘いあわせのうえ、お越しください。
【日 時】平成14年10月5日(土)12:00開場〜17:00
【場 所】岩手県公会堂 旧県議会議場(メイン会場)と会議室(分科会会場)
【主 催】QOLネットワーク
※資料代として千円のご協力をお願いいたします。時間割は変更になる場合があります。予めご了承願います。

分科会
■「PTAおやじの会分科会」:佐藤清忠
  〜おやじのためのゆとり教育と学びのすすめ〜
 現在の子どもの教育の状況を、おやじの立場に置き換えて考えてみませんか。もし自分が現在の教育を受け評価される立場であったら、という想定で、教育問題に関する自由な意見交換をします。その結果、子どもが受けている期待の重さを実感してみます。意見交換の題材は、「ゆとりは日本のおやじをダメにするか」「おやじのための総合的な学習を考える」「個性と能力を最大限に生かしたおやじ人生の面倒は誰がみる」などです。パロディー化したものですが、普段考えていることや体験談を話し合いましょう。
■「実践!地域通貨」:岩手県立大学地域通貨研究会
  〜「結」から考えるコミュニティ再生型地域通貨〜 
 最近、様々な場で大きな広がりをみせている地域通貨。私達は大学というコミュニティ内で、地域通貨「結」によるコミュニティ再生型地域通貨の実験を3ヶ月間実施しました。分科会では地域通貨ゲームを通じて、「地域通貨とは何か」を探ります。
私達の活動を通して、本当に地域通貨はコミュニティ再生のツールとなり得るのかを皆さんと一緒に考えていきます。地域通貨について私達と一緒に考えてみませんか?
■「自転車と街を考える分科会」:晴山好規+菊池敦子+奈良栄介 
〜『プロジェクト・自転車』なぜ今、自転車なのか〜
 気軽に乗れて、荷物も積める、駐車スペースも小さく、免許もいらない、一方通行も大丈夫、地球環境にも優しく、街の雰囲気も味わえる、足に負担がかかりにくく、健康維持にも役に立つ。こんなに利点のある自転車ですが雨、雪などの天候に弱く、歩道を走る自転車や歩道の駐車自転車は困ったもの。盗難や車との接触事故が心配。どうしたものかみんなで考えてみましょう。
■「盛岡を知ろう分科会」:もりおか転妻ねっとわ〜く
 〜知ってると更に楽しい盛岡生活〜
 結婚や転勤で転入して来た妻たちの出身地は、全国様々です。そんな私たちが、感じる言葉・習慣・食べ物・街づくりの「ナニ?」「ドウシテ?」「ナルホド」を、思い切り話してみましょう。地元の方からのアドバイスがあれば・・・。「どれ、教えてやるべか。」と「はなしっこ」しに来て下さい。転入者が盛岡をどう見ているのか知る機会にもなりますよ。「おしょすがりモリオカン」と「出しゃばり転妻」のコラボレーション。如何でしょう? 様々な方のご参加お待ちしてます。
■「盛岡豆腐伝説分科会」:文化地層研究会
 〜なぜ豆腐消費量が日本一なのか?〜
 日本で豆腐といえば、京都・沖縄そして盛岡・・・。なぜ盛岡が豆腐消費量日本一になったのでしょう?「城下盛岡旧町名地図」でおなじみの文化地層研究会がプロデュースして、この10月2日(豆腐の日)に「盛岡覚山豆腐学会」が発足します。日本一の理由には由緒正しき豆腐伝説がありました。そんな盛岡の奥深い伝説を探求します。
■「ディープエコロジー分科会」:宇部眞一+宇部実智子 
 〜樹林気功の午後をご一緒に〜
 ディープエコロジーはスピリチュアルなエコロジー。地球の囁きを体感してみましょうといったイメージです。「がんばらない」とか「健康院」とか、岩手から面白い発想が生まれていますが、本当の健康ややすらぎは、一人一人の生命力、自己治癒力の増進からだと思います。ヨーガも瞑想も気功もポイントは呼吸法ですね。昨年は輪になって倍音声明を唱えてみましたが、いかがでしたでしょう。今回は少し部屋で話したら、岩手公園にでも出て樹林気功をやってみたいと思います。
■「地域資源分科会」:澤口勇治+細田孝高 
 〜身近な資源の活用を/地産地消は再生戦略足りうるか〜
 いやおうなしにグローバルの波に洗われる現代、わたしたちは何を受け入れ、何を捨ててきたのか。地域教育や地域文化は再生産できるシステムとして整備されているのか。そしてそれはコンパクトにできるか。地産地消運動の現状と問題点、エネルギー自給自然エネルギー、各種組合の経営状態分析などを踏まえてね。
■「弱小家業発!エコ商品開発分科会」:高橋昇一郎 
 〜♪難波節だよー環境はーぁ♪〜 
 日本の産業の99%は中小企業が支えております。環境問題はもはや避けては通れぬ状態で、何も大手上場会社だけの専売特許ではありません!これから環境産業を目指す方、社内ベンチャー等で環境対応製品の開発に携わる方、そんな興味のある方を対象にココまでやれる商品開発!企業の本音とタテマエ!これからの売れる商品!主婦必見!貴女も出来るグリーン購入!「タダより安いものはない!」まっ、当日の機嫌で話がまたどこまで飛躍するかはわかりませんけど・・・頑張ります。
■「コミュニティ・ビジネス分科会」:江釣子卓也   
 〜江釣子商工会の挑戦〜
 江釣子地区のコミュニティ・ビジネスの事業の目的は「住み良い地域づくりに貢献していく」ことにあります。江釣子地域の住民が最大に誇れる特性は、人々や隣近所17地区を中心とした義理人情や団結、暖かい人間性です。昨今、世間で失われつつあるこの豊かな人間性、社会性を大切に守りながら、地域に根ざした商工会として未来のあるべき姿を求めるために「心の通い合う地域の創生と産業の振興を目指して」をコンセプトに、コミュニティ・ビジネス事業を実施しています。
詳細はhttp://qol.soc.or.jp/act/forum3/をどうぞ。

バルトーク:44の二重奏曲を聴きながら