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目と耳のライディングバックナンバー

◆第293回  ヒノテルとJAZZ(8.Apr.2013)

 ジャズ喫茶一関ベイシーで、日野晧正カルテットを聴いた(3月10日)。メンバーは日野皓正(トランペット)、 石井彰(ピアノ)、 須川崇志(ベース)、田中徳崇(ドラムス)。
ジャズではピアノ・ベース・ドラムスのトリオをリズムセクションと呼ぶ。トリオにソロ楽器が加わったカルテットは、それぞれの楽器の魅力を味わい、ソロ楽器のミュージシャンの力量を知るのにうってつけの編成だ。もう一人ソロ楽器が加わるとクインテットとなり、アンサンブルの妙が味わえる。ちなみに、私はクインテットよりもカルテットのほうが好きだ。
 日野さんはお話がおもしろく、しかも長い(30分ほど話しこむこともあった)ことで知られているが、今回は短かった。それでも、東日本大震災のチャリティのためにつくった『ネバーフォーゲット3.11』を紹介するときに「亡くなった方たちは天国で、くよくよした顔は見たくないと言ってるはず。苦労するときは苦労する。楽しむときは楽しみしましょう」と力強いメッセージを語ったことが印象に残った。
 また、トリオの演奏をバックにしての「少年は爆弾をつくった」ではじまる谷川俊太郎の詩の朗読もよかった。これについて日野さんは「昔はメイラーやギンズバーグがこういうことをやっていたんだよ」と解説した。
 「アローン・アローン&アローン」などのオリジナル曲のほか、ボサノヴァの名曲「ハウインセンシティヴ」を4ビートで(4ビートの曲をボサノヴァ化するのは珍しくないが、逆は珍しい)、日野さんを除いたピアノ・トリオでセロニアス・モンクの「エビデンス」、そして鈴木勲の「(8番街)45丁目」などが演奏された。この曲は、あるミュージシャンが別のタイトルをつけて自分の曲として録音しているが、まぎれもなく鈴木勲のオリジナルである。そんなエピソードも披露した。
 日野晧正カルテットは編成こそオーソドックスなカルテットだが、出てくる音のひとつひとつが斬新だ。それは日野さんのトランペットに限らず、ピアノにもベースにもドラムスにもいえる(ただ、そういう意味ではドラムスは今回ちょっと物足りなかった)。 これが何よりも大きな特徴だろう。
 終演後、マスターの菅原正二さんの勧めで2階の楽屋を訪問した。日野さんは3、4年前にトランペットとマウスピースを替えている。トランペットを替えることは珍しくないが、マウスピースを替えるのは珍しい。その理由を尋ねたかったのだが、十数年前にニューヨークでお目にかかったときのことなどを話しているうちに時間になってしまった。
 日野さんは1964年から演奏活動をされているというから、もう半世紀になろうとしている。これくらいになると、往年の自分自身のスタイルを模倣、反復しても誰も文句は言わないものだが、日野さんは今もなお新しいジャズに挑戦しつづけている。 いろいろな意味で私もみならいたい。
〈このごろの斎藤純〉
〇目が痒く、鼻水がとめどなく流れてくる。花粉症真っ盛りである。今年は花粉が猛威をふるっているようで、いつもの薬があまりきかないことがある。サイクリングやツーリングに最適のシーズンだというのに、いやはや何とも。
音の瞬間/ビセンテ・アミーゴを聴きながら

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