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目と耳のライディングバックナンバー

◆第310回  2013年の観もの聴きものを振り返る (16.Dec.2013)

 今年は16本のコンサート、33本の美術展、16本の映画、1本の演劇に足を運んだ。いずれも例年とほぼ同じ数だが、映画が少なかった。夏以降、時間をつくってまで観たいと思う作品がなかったことが大きい。いい作品が夏前に集中していたような気がする(もちろん、これは私の好みの映画ということにすぎないのだけれど)。
 実はあまり期待していなかったミュージカル大作『レ・ミゼラブル』が圧倒的な印象を残しているし、『007スカイフォール』もよかった。地味ながら『アルゴ』、『シュガーマン』も長く記憶に残る映画だった。
 一方、『華麗なるギャツビー』がちょっと期待外れだったのは、1974年のロバート・レッドフォード版に私が思い入れを持っているからだろう。時間の無駄と思える映画もあった。『ワールド・ウォーZ』と『エリジウム』がそれだ(この2作については何も書く気がしない)。
 邦画はほとんど観ることがないのだが、『利休にたずねよ』は心に深く染み込み、後を引いている。観てよかったと、しみじみ思った。
 コンサートは第309回に記した三つのレクイエムが今も脳裏で鳴り響いている。また、第307回に記した山下達郎ツアーも忘れられない。達郎なら三日三晩聴いていたいと改めて思った。
 美術展については第308回にも記したように、日本画を観る機会に恵まれた年だった。また、アントニオ・ロペスを知ることができたことも大きい。ロペス体験は一生の宝になりそうだ。
 残念だったのは、プーシキン美術館展を観られなかったことだ。横浜美術館までは行ったのだが、長蛇の列を見て諦めてしまった。買ってきた図録を見ると、ロココ美術が多かったようだ。
 チャイコフスキーが「ロココの主題による変奏曲」というチェロと管弦楽団のための作品を残しているのを連想した。チャイコフスキーはプーシキン美術館でロココ美術と出会ったのではないだろうか。
 コンサートも美術展も一期一会だ。東日本大震災後、その思いを強くしている。コンサートホールや美術館にいる、その時間の意味を噛みしめ、大切にしたいと思っている。
 来年はどんな一期一会が待っているだろうか。
〈このごろの斎藤純〉
〇盛岡文士劇を終えたとたん、体調に異変が生じた。幸い軽かったからよかったが、体力の衰えをこういうときに感じる。ちなみに、文士劇の出演者のうち私が知っているだけでも3人が、文士劇を終えて数日後にダウンしている。
 今年は4回公演で、いつもより1回多かったから、疲れが溜まっていたのだろう。しかし、プロの役者はそれが日常なのだ。つくづく凄いものだ、と改めて痛感させられた。
『静かなるケニー』を聴きながら

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