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目と耳のライディングバックナンバー

◆第313回  「めざましクラシックス」で目を覚まそう (10.Feb.2014)

 フジテレビの人気同名番組のコンサートが久々に盛岡で開催された。私は2002年(第34回)と2004年(第63回)に聴いているが、2005年は残念ながら聴き逃した。それから何と8年も間があって、ようやく盛岡での開催となった(昨年は北上市のさくらホールで開催されたが、私は都合がつかなくて行けなかった)。
 バックナンバーをご覧いただければおわかりいただけるとおり、このコンサートは、親しみやすいクラシックの名曲をセンスのいい編曲と、高度な演奏によって楽しんでもらうことをコンセプトにしている。
 もちろん、ヴァイオリンの高嶋ちさ子とフジテレビの軽部真一アナウンサーの軽妙かつスリリリングなやりとりも大切な要素だ。このお二人を中心にくりひろげられるお話にガハハと笑いころげているうちに、クラシック音楽の歴史や楽器などについて学べる仕組みになっている(今回は特にヴィオラにスポットがあてられた。これが傑作だった)。
 このような趣向を局アナがやる場合、どうしても「台本を読む」ことになってしまいがちだ。いくら台本が立派でも、自分が理解していないことは聴衆に伝わりはしない。その点、軽部アナはクラシックマニアだから説得力がある。しかも、普通なら台本を手に進行するところだが、難しい曲名も台本なしで紹介する。あれは観ていて気持ちがいい。
 プログラムとメンバーは下記のとおり。
【第1部】
1 メンデルスゾーン:歌の翼に
2 J・シュラウスII:皇帝円舞曲
3 レハール:ワルツ・メドレー(「メリー・ウィドウ~ジュディッタ、ルクセンブルク伯爵~工場の娘~ひばりが歌う所)
4 フォーレ:ラシーヌ讃歌
5 ピアソラ:リベルタンゴ
【第2部】
6 L・モーツァルト:おもちゃの交響曲より第1楽章
7 プリンセス・メドレー(『白雪姫』より「いつか王子様が」~『シンデレラ』より「シンデレラ」、「夢はひそかに」~『眠れる杜の美女』より「いつか夢で」~『美女と野獣』より「朝の風景」、「ひとりぼっちの晩餐会」)
8 映画『アラジン』よりA Whole New World
9 『ムーラン』より「リフレクション」~『リトル・マーメイド』より「パート・オブ・ユア・ワールド」
【スペシャルゲスト】~渡辺真知子~
10 かもめが翔んだ日
11 愛(いのち)のゆくえ

12 モンティ:チャルダーシュ
【アンコール】
13 見上げてごらん夜の星を

ヴァイオリン・音楽監督:今井均

ヴィオラ:生野正樹
チェロ:江口心一
ピアノ:伊賀拓郎
ヴォーカル:伊東えり
 ゲストの渡辺真知子さんはデビュー当時から歌唱力と声量の豊かさが評判だったが、年齢を重ねて声に深みが増した。また、歌い方も変わってきたようで、声のエッジがなくなり、まろやかになった。ルックスの変貌とあいまって、私には往年の名歌手ペギー葉山の姿が重なって見えた。
 千の声色を持つ伊東えりのヴォーカルにもうっとりさせられた。相変わらず委細かまわず毒舌・暴言ぎりぎりのコメントをズバズバ連発する高嶋節も小気味よかった。あれで(と言っては失礼だが)名器ストラディバリウスから甘美な音色をひきだすのだから、そのギャップもおもしろい。
 8とアンコールでは、例によって軽部アナも美声を披露した。今回、岩手めんこいテレビのアナウンサーの「隠し芸コーナー」がなかったのは残念。
 クラシックファンはこういうコンサートを軽視しがちだが、高いレベルの演奏を気楽に聴けるのが嬉しい。それに、高度な編曲がなされた楽曲を聴くと、また違った魅力があるものだと気づかされる。いや、コンサートのタイトルにあやかって「目を覚まされた」と記しておきたい。
〈このごろの斎藤純〉
〇今年は雪こそ少ないが、ずいぶん気温が低いような気がする。私は風邪もひかずに過ごしているが、まわりでは風邪とインフルエンザが猛威をふるっている。みなさまもお気をつけください。
〇年末はさほど忙しくなかったが、年度末を迎えて何かと忙しない。ここを乗り切れば、あとは春の訪れを待つばかりだ。と、自分に言い聞かせている。
チェット・ベイカー・イン・トーキョーを聴きながら

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