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目と耳のライディングバックナンバー

◆第331回 ニューヨークの音を聴く (4.Nov.2014)

 9月の〈いわてJAZZ2014〉で素晴らしいジャズ体験(「聴いた」というよりも「体験した」というほうが相応しいコンサートだった)をした余韻がまだ覚めないうちに、また凄いジャズ体験をする機会に恵まれた。ミカリンバ2014ツアー(10月16日午後7時~おでってホール)である。
 何はともあれ、メンバーが凄い。ミカ・ストルツマン(マリンバ)、ステーヴ・ガッド(ドラム)、リチャード・ストルツマン(クラリネット)、ジョン・トロペイ(ギター)、エディ・ゴメス(ベース)、デューク・ガッド(パーカッション)。このバンドのリーダーのミカさんはマリンバ(共鳴用の金属パイプが付いている大型木琴といえばわかりやすいか)奏者なので、ミカリンバ。もうこのバンド名(このごろはユニット名などともいう)からしてふるっている。
 名は体を表す。ミカリンバのジャズは今を生きる、さまざまな音楽が融合したものだった。
 もともと黒人音楽と白人音楽の融合から生まれたジャズは、南米の音楽を取り入れたり、クラシック寄りに行ったり、前衛を試みたり、東洋風の響きを吸収したりするなどしてひろがってきた。日本では、そのひろがりを一定の範囲で抑えたオーソドックスなジャズ(スイングやハードバップなど)が好まれている。ま、私もそういうジャズが嫌いではないが、型にハマったジャズをずっと聴いていると飽きてしまう(ごめんなさい、これはジャズ・ミュージシャンのせいではなくて、私の耳のせいです)。
 だから、私は割とヨーロッパのジャズを聴くことが多い。黒人音楽の影響をあまり受けていないヨーロッピアン・ジャズは、筋金入りのジャズ通には「スイングしていない」と相手にされない。
 話がそれてしまった。
 ミカリンバは、いわゆるオーソドックスな4ビートのジャズではない。それぞれの楽器が複雑に絡み合う室内楽的な響きのジャズだが、決してクラシック寄りというのでもない。ちゃんとスイングしている(スティーヴ・ガッドが叩いているんだから、あたりまえといえばあたりまえだが)。
 私は単純に「ああ、ニューヨークの音だ」と受け止めた。いろんな要素がシチューのように煮込まれていて、そこに知性のスパイスが効いている。そういう音楽を私はニューヨークの音だと思っている。
 もうひとつ、アットホームな雰囲気もこのコンサート独特のものだった。なにしろ、ステューブとデュークは親子共演だし、エディ・ゴメスは「エディおじさん」と呼ばれているそうで、ニューヨーク・ジャズファミリーの雰囲気を味わうことができた。
 ミカさんのマリンバから響きわたる低音にびっくりした。PAがうまかったのかもしれないが、あんな深い音は初めて聴いた。アンコールでのミカさんのラップ(博多弁だろうか)も大傑作だった。あれは坂田明さんが聴いたら大いに喜ぶことだろう。
 そのミカさんが「秋田のお客さんもよかったけれど、盛岡のお客さんの乗りが素晴らしい」とおっしゃっていた。昔、ジャズ界では「盛岡は耳の肥えた客が多い(だから、しっかりやらないと怖い)」と言われていたが、それは今も変わらないようだ。
 今年は盛岡にいながらにして、いわてJAZZでマイク・スターンを聴くことかできたし、このコンサートではジョン・トロペイの渋いプレイが聴けた。ギターファンの私にとっては素晴らしい年だった。
〈このごろの斎藤純〉
○CB1100EXが納車された。新車同然の中古車だ。このオートバイを初めて見たとき、CB750に憧れた子どものころの「ときめき」がよみがえった。なかなか乗ってやる時間がとれないのが残念だ。
カルウォヴィチ:ヴァイオリン協奏曲を聴きながら

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