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目と耳のライディングバックナンバー

◆第350回 夏の終わりの室内楽コンサート (24.Aug.2015)

 優れた作曲家・編曲家であると同時にピアニストでもある長谷川恭一さんと弦楽四重奏団ラトゥールカルテット(ヴァイオリン=山口あうい、馬場雅美/ヴィオラ=熊谷啓幸/チェロ=三浦祥子)のコンサートを、『伊藤馨一彫刻展』を開催中の岩手町立石神の丘美術館で聴いた(8月22日午後6時30分開演)。
プログラムは下記の通り。
【第1部】
[1]ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 変ロ長調op.133「大フーガ」
【第2部】
[2]フォーレ:ピアノ五重奏曲第1番ニ短調 op.89より第3楽章
[3]シューベルト(長谷川恭一編曲):ピアノ五重奏曲「ます」より第4楽章
[4]長谷川恭一編曲によるシチリアーノメドレー(レスピーギ:リュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲より第3曲シチリアーナ/フォーレ:シチリアーノop.78/モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番K.488第2楽章アダージョ/ベートーヴェン:交響曲第7番op.92第1楽章より/ジョビン:波)
[5]マックス・スタイナー(長谷川恭一編曲):夏の日の恋
【アンコール】
[6]イパネマの娘(ジョビン)
[7]ふるさと(高野辰之/岡野貞一)             
 私が企画したコンサートだし、出演者も友人たちだ。だから、何を書いても「身内褒め」と受け取られるのは承知のうえだが、やはりいいものはいいと書くしかない。
 ことに[1]の疾走感溢れる演奏は、適度な緊張感を保ちつつもどこかのびのびとしていて、みごとだった。弦楽四重奏曲の難曲中の難曲であるこの曲で「のびのび演奏している」と感じさせるのは相当なことだ。
 2009年にここ岩手町立石神の丘美術館でデビューしたラトゥールカルテットは、停滞することなく着実に腕を上げてきている。素晴らしいことだと思う。
 第2部は雰囲気をガラリと変えて、名曲のオンパレードでまとめた。曲名は知らなくてもどこかで耳にしたことのある曲ばかりだ。シチリアーノはシチリア島の舞曲にルーツを持つ8分の6拍子(あるいは8分の12拍子)の曲で、哀愁を秘めた旋律に特長がある。古今のクラシックの作品に加えて、ジョビンをまぎれこませるあたりが、いかにも長谷川恭一さんらしい。[5]と合わせて、夏の終わりに相応しいプログラムとなっていて、センスのよさに感銘を受けた。
 私は基本的に1楽章だけ抜粋した演奏をあまり好きではないのだが、このコンサートを聴いて、こういうのも楽しいと考えを改めた。それだけいい演奏だったということだろう。
 ほぼ満席となった客席のみなさんも優しい笑顔で帰られたから、以上は決して私の依怙贔屓とはいえまい。
〈このごろの斎藤純〉
○今夏は北海道、会津とロングツーリングがつづいた。さすがに疲れが溜まり、もともと夏の暑さに弱いこともあって、久しぶりに夏バテを経験した。が、涼しくなるのも早かったから、体調をあまり崩さずにすんだのは幸いだった。
○9月16日の「もりげきライヴ」(盛岡劇場地下タウンホール)に、私が率いるザ・ジャドウズが出演することになり、練習を重ねている。こんなに熱心にバンドに打ち込むのは、大学時代以来のことだ。
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