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◆第42回 〈北の響き〉を聴く( 27.January.2003)

○ララ・ガーデン・コンサート「ウィーンからの風」
−ヴィオラとピアノのジョイントコンサート−

 盛岡市出身でウィーン在住のピアニスト鈴木理恵さん(東京音楽大学ピアノ演奏家コース、パリ国立高等音楽院卒業。主な受賞歴はマリア・カナルス国際音楽コンクールでデュプロマ・ドノール賞、エピナル国際ピアノコンクールで現代音楽優秀演奏賞、ロベール・カサドシュ国際ピアノコンクールでフランス音楽最優秀演奏賞)と、オーストリア出身のヴィオリスト(ヴィオラ奏者)ヴォルフラム・フォルティンさんが、ララ・ガーデン(雫石町)でコンサートを行なった。まず、曲目をご覧ください。

J.N.フンメル(1778-1837)
「ヴィオラとピアノのためのソナタ 変ホ長調Op.5−3」
G.クルターク(1926-)
「ピアノのための“あそび”、ヴィオラのための“サイン”Op.5」より
P.ヒンデミット(1895-1963)
「ヴィオラとピアノのためのソナタ Op.11−4」
      −休息−
J.ブラームス(1833-1897)
「ヴィオラとピアノのためのソナタ 変ホ長調Op.120−2」

(アンコールにバルトークの「トランシルヴァニアの夕暮れ」とブラームスの「ワルツ」)

 ブラームスを除けば、ほとんど馴染みのない作曲家の名が並んでいるので面食らうのではないでしょうか。
 フンメルはトランペットを演奏する人ならその協奏曲で知られている。ベートーヴェンとほぼ同時代を生き、後に「ベートーヴェンがいなければ、フンメルの名がその代わりにひろまっただろう」と言われた(記憶が曖昧だが)。クルタークは現代音楽の、しかも前衛の人。ヒンデミットは彼自身が名ヴィオリストだったので、ヴィオラのための曲を多く残している。
 ブラームスはヴィオラのためのソナタを2曲残している。どちらも、もともとは音域が同じ木管楽器クラリネットのために書いたソナタだが、ブラームス自身の手によってヴィオラ版にされたもの。こういうプログラムはめったに聴く機会がないので、大いに楽しみにして出かけ、そして大きな満足を得て帰ってきた。
 音楽というのは不思議なもので、細部は上手に弾けていて「たいしたものだ」と感心はしても、全体を振り返ってみると何にも残らないという演奏がある。今回の場合、フォルティンさんは若干ミスをしたが、そんなことを忘れさせるほど素晴らしい演奏だった。それは音楽の全体を深く理解している証拠に他ならない(日本で音楽を教えている大学では、この一番大切なところの教育が不足しているような気がする)。
 ひとつ希望を言えば、ヴィオラ・ソナタを一曲減らして、鈴木理恵さんだけのピアノ・ソナタを一曲フルに聴きたかった。というのも、鈴木さんの演奏によるクルタークの小品がとても素晴らしかったからだ。あの難しい現代曲を、まるでロマン派の作品のように聴かせてくれた鈴木さんの世界にもっと浸っていたかった。

 会場の窓からは岩手山の冬景色が見えていた。小雪がちらつくなかでヴィオラとピアノのソナタがとても似合っていた。
 それにしてもブラームスの何と美しかったことか。
 バッハの音楽は神に語りかけ、ベートーヴェンは全人類に語りかけ、ブラームスはあなたに語りかける−−確かそんな言葉があった。その通りの音楽だった。
 当日は鈴木さんご自身が書いた解説入りのパンフレットが配られた。これがとてもいい解説で、クルタークのエピソードなどはウィーンで音楽生活を送っている鈴木さんならではのものだ。これは会場に足を運んだ人の特権なので、ここではあえて紹介しません(僕も意地が悪いですね)。

 なお、次回のララ・ガーデン・コンサートは3月2日午後2時から、森永一永ソプラノ・リサイタルです。問い合わせは019−693−3170ララ・ガーデン(岩崎さん)にどうぞ。
 川崎市宮前区に住んでいた頃、近くにコンサートホールを持つお宅があった。会員制でその会費がとても高かったので僕は入れなかった。横浜市美しが丘にも、コンサートホールを持つお宅があった。諏訪内晶子さんが子供のときからそこで演奏し、耳の肥えた音楽ファンに支えられて、今のような世界的なヴァイオリニストになったそうだ。
 ララ・ガーデンで鈴木理恵さんの演奏を聴きながら、そんなことも思いだした。

◆このごろの斎藤純

〇家にずっとこもっていると、体重がどんどん減る。テニスをやめたので、体を動かさないから食が細くなるのだ(僕はそういう体質なのです)。しかも、肩と肘の痛みがなかなか引かない。春になって、気温が高くなれば治ると聞いた。早く春にならないものか。
〇集中力がまったくなくなってきている。オートバイにも乗れないせいだ(僕はそういう性質なのです)。早く春になってほしい、本当に。

ヒンデミット:「白鳥を焼く男」を聴きながら