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◆第86回 私の愛用品 (13.December.2004)

 今回はまた趣向を変えて、『私の愛用品』というエッセイを掲載します。これは作家が集まってつくっているインターネット・サイトe-novelsが発行しているメールマガジンに書いたものを若干アレンジしました。メールマガジンの講読方法については文末に記します。

 愛用品、いっぱいありますね。富士通親指シフト(もう20数年の付き合い。これがないと原稿を書けません)、ビアンキ・ボルペ(自転車ですね)、中古のBMW・R1150ロードスター(大きいオートバイ。旅の道具)、同じく中古のトヨタ・プリウス(こいつのハイブリッド・エンジンはポルシェにもフェラーリにもない。エヘン)、これまた中古の北欧製ヴィオラ(矢巾町の田園室内合奏団に入って足をひっぱっている)、マーティンのトランペット(マイルズ・デイヴィスが使っていたメーカーだ。今度、肴町らっぱ隊でデビューする)、中古のホセ・ラミレスのエレガット(クラシックギターにマイクが仕込んである。ラミレスはスペインが誇るギター製作の巨匠だが、僕のは工房でつくった普及品)、ウィンザー&ニュートンの固形水彩絵の具とコリンスキー・セーブル筆(『オートバイの旅は、いつもすこし寂しい』ネコ・パブリッシング刊に下手な水彩画がちょこっと出てます)、集英社新書創刊のときにいただいた(泣きつき、拝みたおし、無理やり奪ったとも言う)特製豪華本皮製新書カバー、ダナー・ゴアライト(トレッキングシューズですが、これでニューヨークやパリを歩いてもさほど違和感がない。3〜5年かかって履きつぶしてはまた同じやつを買うというパターン)、ニコン・マイクロという小さな双眼鏡(覗き用に非ず)、初めての文庫本が出た13年前に記念として買ったオメガの自動巻きクロノグラフ、メーカーは忘れたけれど10年以上使っているクリスタル製の大きなグラス(バーボン&ソーダにぴったり)。

 ごく最近、スーパーカブ90が愛用品に加わった(これには今後20年、つまり60代になっても乗りつづけるつもりで新車を思いきって購入。スーパーカブはスクーターと違ってタフなので充分もつ)。逆に一番古いものは、パイロット万年筆(ペン先はミュージック)ですね。25年近く使っていて、調整など一度も出したことがないのに現役。高価なものではなく、2万円代で買ったと記憶している。

 おおっと、スミス&ウェッソンのモデル642エアウェイトも忘れてはならない。こいつはマグナムより反動が少なく、38スペシャルよりちょっと強力なカートリッジを6発----って、これは嘘です。

 どれが仕事の道具でどれが遊びの道具なんだか判然としない(まあ、それは我々の仕事の場合どうでもよいことです)。どれも決して一流品とか高級品を基準に選んだことはなく、飽きずに長く使えるものを選びに選んで手に入れてきたつもりです(だから、僕は買うまでに半年以上悩むことがザラにある。そのうち必要ないな、と気が変わることもたびたびあり、そういうものは最初から縁がなかったと思っていい)。

 「一生もの」という宣伝文句はよく見ますけれども、たとえばルイ・ヴィトンのバッグを一生かかって使いきった人、あるいは使いきろうとなさっている人って、かまやつひろし氏以外に僕は知りません。ほとんどの方は新しいモデルが出るたびに「一生ものだから」と買っている。いえ、それも景気回復のために大いにけっこうだと思うけど。僕のように物持ちがよく、お気に入りのものを長く使う人は、日本経済の敵です。

 学生時代から僕は体型がほとんど変わっていないので、ジャケットやコートなどはまだ着られる。何本か持っているリーヴァイスのブルージーンズのうち1本は確実に10年以上前のだから、これってもしかして「ヴィンテージ」?

 こんなことがありました。10年来愛用のダンガリーシャツ(色褪せて、襟や袖口がボロボロ)を着て東京に行こうとしたら家内が「そんなの着てったら恥ずかしいわ。よほど貧乏なんだと思われるし」と申すので、「東京では誰も僕のことなど知らないし、貧乏なのも周知の事実なんだから」と納得してもらいました。やはり、そのシャツで市内に出かけようとしたとき「みんな見てるんだから、もっとちゃんとした服装で行ってください」と申すので、「どんな服装だろうと、ここではみんな僕のことを知ってるから平気だよ」と納得させました(これは冗談ですからね、本気にしないでください)。
 実は上に列挙した愛用品をすべて手放し、鉛筆と紙とクラシックギターと自転車だけの生活をすることが僕の究極の夢です。これだけあれば、文章を書き、音楽を奏で、盛岡周辺の田園地帯に出かけては絵を描くという毎日を過ごすことができます。もちろん、そんな才能などないのですから、しょせん、かなわぬ夢ですが。

 というわけで、瀬名秀明さんや我孫子武丸さんらも執筆している メールマガジンは『 まぐまぐ! 』を利用して発行しています。バックナンバーは、http://www.mag2.com/m/0000115290.htmの「バックナンバー」の項目から読めます。

◆このごろの斎藤純

〇12月20日、プラザおでってで「キャンドルナイト」が行なわれます。
「夏至の日と冬至の日の夜、8時から10時の2時間、みんなでいっせいに電気を消しましょう。ロウソクのひかりで子どもに絵本を読んであげるのもいいでしょう。静かに恋人と食事をするのもいいでしょう。ある人は省エネを、ある人は平和を、ある人は世界のいろいろな場所に生きる人びとのことを思いながら。プラグを抜くことは新たな世界の窓をひらくことです。一人ひとりがそれぞれの考えを胸に、ただ2時間、でんきを消すことで、ゆるやかにつながって「くらやみのウェーブ」を地球上にひろげていきませんか」
詳しくは1000000人のキャンドルナイトのHPをご覧ください。
  キャンドルナイトのHP
  キャンドルナイトのHP(全国版)

・プラザおでってホール(入場料無料)
・18:00〜21:00   ☆20:00〜周辺、ライトダウン!
キャンドルステージの中でライブやトークをします。
@環境トーク・エコグッズ紹介・キャンドル芸術展示・冬の屋台・アコースティックコンサートほかいろいろ。お楽しみに!
〈コンサート内容〉
 1、岩手大学ギターアンサンブル
 2、口笛競演 高橋良和さんとウイグル人のムフタルさんの素敵な口笛演奏です。
 3、肴町らっぱ隊
 4、読み聞かせ(マッチ売りの少女)
 5、キャンドルナイトソングコンテスト受賞者発表

・屋台(予定)
 かぼちゃのひっつみ・甘酒・焼き鳥・おでん・冬至オリジナルカレー

〇毎年、その年のミステリー小説からベスト10を選出している『このミステリーがすごい』(宝島社)の2005年版で、拙著『銀輪の覇者』がベスト5になった。ベスト10内に入ったのは初めてだし、これまで書いたことのない新しいジャンルに挑戦した小説が高い評価を得ることができ、正直、ホッとした。安心して年越しができるってものです。

ルロイ・アンダースン作品集を聴きながら