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◆第109回 近代化遺産を見に行こう!!(31.october.2005)

盛岡の近代化遺産見学会(盛岡市教育委員会主催・東北電力岩手支店協賛)
2005年10月22日午前9時〜午後3時半

 近代化遺産とは、「江戸時代からおよそ50年前までにつくられた我が国の近代化に貢献した建造物のことで、その代表的なものに近代的手法でつくられたもので、大きく分けて産業・交通、土木・都市、住宅・公共等に係わる建造物があげられる」と全国近代化遺産活用連絡協議会(略称「全近」)のパンフレットにある。しかし、これは悪文ですね。もう少しどうにかならないかと思い、あえて原文のまま引用した(自分のことを棚に上げてますが)。なお、このパンフレットには岩手銀行旧本店本館の写真も各地の代表的な近代化遺産と共に掲載されている。

 で、明治政府に工部省が設置された明治3年10月20日を記念して、10月20日は「近代文化遺産の日」となっている。これに合わせて10月20日から11月13日の期間中に、全国で近代化遺産が一斉公開されている。そのなかには通常は公開されていないものも含まれているので、楽しみに待っていた人も多いようだ。

 さて、私たち見学会一行は、全近の中心的人物でもある渡辺敏男氏(設計家・岩手大学講師・盛岡まちなみ塾)の総合案内で、米内浄水場、東北電力米内発電所、旧宇津発電所、旧南部家別邸、旧中村家住宅、旧石井県令私邸をまわった。
 はじめに渡辺さんから「盛岡は商業都市だった。そのため、他都市と違って、近代化遺産に工業関係のものがないのが特徴で、水と電気関係、銀行、それに町家などが近代化遺産としてあげられる」と概要の説明があった。なるほど、そういえばそうだ。自分が住んでいるまちのことなのに、言われて初めて気がついた。
 こういうことがあるので、この種の催しはおもしろい。以下、簡単に印象を記しておく。

●米内浄水場=昭和9年完成。全国でも珍しい緩速濾過(米内川から引いてきた水を石、砂、微生物で浄化。現在の主流は薬品を用いる急速濾過)の浄水場。盛岡の水はおいしい、とよくいわれるのはこの施設のおかげ。建物にアール・デコが取り入られるなど、「遊び」が感じられる。この当時の建物はかなり堅牢で、同じコンクリート建築でも現在のそれよりも長持ちしている。

●米内発電所=昭和17年完成。米内浄水場と同じように、現在も現役の施設。近代化遺産にはすでに役割を終えたものと、このように現役のものがある。

●旧宇津野発電所=明治38年営業開始。盛岡市内77戸に初めて電燈を灯した記念すべき施設。現在は使われていない。米内浄水場と共に通常は非公開(年に何度か特別公開があるほか、予約による公開は行なっている)。明治期の洋風木造建築の外観は、私が通っていたころの城南小学校の木造校舎を思いださせた。

●旧南部家別邸/ 旧中村家住宅=どちらも中央公民館(旧南部家別邸跡)の敷地内にある。旧中村家住宅(江戸末期・明治)は旧穀町から移築したもの。渡辺さんから「建物を保存する際、このように移築する方法が果たしていいのかどうか。大いに反省する必要がある」という指摘があった。確かに建物(近代化遺産)はそれ単独で成立するのではなく、周囲の環境(河川による運輸や街道など)があってこそのものだ。そこから切り離してしまうと、歴史的な背景がわかりにくくなってしまう。それにしても、中央公民館は素晴らしい環境だ。

●旧石井県令私邸=明治20年頃。盛岡に残る最も古い洋風建築物。かなりの修繕・改築が行なわれてあったが、渡辺さんらの手によってオリジナルに近い形に戻された。オランダの民家を手本にしており、近くに盛岡監獄署があったことから服役者が建設作業に係わったという。ここは「また来たい」と思わせる何かがあり、私は以前から好きな場所だ。実は和館も隣接しており、一部が当時のまま残っているのだが、個人宅なので見ることはできない。

 以上、ざっとまとめたが、盛岡にはまだまだ多くの近代化遺産がある。渡辺さんはそれらを「古くなったから壊す」ではなく、再利用していこうと説く。「ただ残す」のではなく、「活用する」という点が重要だ。近代化遺産を「まちづくり」に活かすという考え方に私もおおいに共感を覚える。
 近代化遺産を活かしていくうえでも、まず我が郷土を知ることが大切だ。これからも機会があれば、こういった催しに参加していこうと思っている。

◆このごろの斎藤純

〇映画祭が終わったとたんに今度は文士劇である。今年の演し物は「鞍馬天狗」だ。鞍馬天狗はもちろん高橋克彦氏で、私は桂小五郎を演じる。演出の浅沼久氏が「桂小五郎は善玉の二枚目です」とおっしゃったので、「それなら地でいけるから、演技の必要がない」と応じたら、出演者一同から大顰蹙を買ってしまった。

デラニー&ボニー&フレンズを聴きながら