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◆第126回 室内楽を楽しむ(26.june.2006)

岩手県民オーケストラ室内楽演奏会
2006/5/28(日) 盛岡市民文化ホール小ホール 
開場13:30、開演14:00

 岩手県民オーケストラとそのOBらによる室内楽の演奏会があった。アマチュアとはいえ、腕達者な人たちだし、初めて聴く珍しい曲もあったので楽しみに出かけた。

 演奏者と曲目は下記のとおり。吸引力のある演奏を聴かせる及川順さんと鈴木まほろさん、安定感のある金指和哉さんと佐藤誠さん(意欲的なプログラムを組み、会場からひときわ大きな拍手を浴びていた)、地味ながらツボを押さえている小笠原伸子さんらがいつもながらいい演奏を聴かせてくれた。そして、今回は、大森明子さんの成長の著しさに驚いた。いつの間にあんなに美しい音を出すようになったのだろう。音楽に対する理解の深さがうかがる(音程がよくなれば、鬼に金棒ですね)。

 ゲストの滝沢善子さんが加わったゴーベール(フルート奏者、指揮者として著名)の作品を聴くのは初めてだった。いかにもフランス音楽だなあ、という曲で、滝沢さんもリラックスして演奏していた(ように見えましたが、実際はどうなんでしょうか)。

 ガブリエリの(変わった楽器編成の)曲も初めて聴いた。金管楽器群に弦楽器を加える場合、普通はコントラバスかチェロを入れると思うのだが、ヴィオラが入っている。音量的に合奏部分でヴィオラは当然負けてしまう。不思議な組み合わせだ。役割も変わっていて、ドローン効果のような音を出していた。
 こういう選曲もアマチュアの特権だと思う。

 さて、この日の演奏の白眉は最後のモーツァルトだった。
 最近の傾向として、モーツァルトはあっさり風味で演奏する場合が多い。これは音楽史的な解釈に基づくものだ。
 だが、この日は音楽史よりも、演奏家の思いや熱意を優先させた。結果、このごろでは珍しい(いわゆるバタ臭い)濃厚な演奏になった。
 決してもったりしていたわけではなく、充分にスピード感を持ちつつ、流れるようにというよりは、深く刻みこんでいく。一瞬たりとも気を許せないという密度の濃さ。
 これだけのモーツァルをまとめあげたメンバー諸氏とコンサート・ミストレルの米倉久美さんに、会場からも惜しみない拍手が送られた。米倉久美さんについては、この連載でも何度か触れてきたが、一段と頼もしく感じた。

 「身内の演奏会ですから」と出演者は半ば謙遜しておられたが、お金をとって聴かせてもいいとぼくは思った。


          -プログラム-
〈第1部〉
[1]ヴィヴァルディ:調和の霊感3-3 
Vn:小西智美・生田恭子・高橋洋子 Va:鈴木まほろ Vc:山崎篤Cb:望月隆史 Cemb:小笠原 史 
[2]モーツァルト:弦楽四重奏曲変ロ長調 KV458より第1楽章と第3楽章
1stVn:佐藤結歌 2ndVn:武田利都子 Va:小笠原信子 
Vc:坂水由佳 
[3]アストル・ピアソラ:タンゴの歴史〜カフェ1930(フルートとギターのための)
Fl:佐藤誠 G:佐藤典子 
[4]ベートーヴェン:バイオリンソナタ 第1番 ニ長調 Op.12-1 Vn:金指和哉 Pf:玉山得子 
[5]P.ゴーベール Piece Romantique(フルートとチェロのための)
Fl:佐藤誠 Vc:大森明子 Pf:滝沢善子

〈第2部〉
[6]ハイドン:弦楽四重奏曲第75番ト長調 Op.76の1より第1楽章と第4楽章 
1stVn:高橋文二 2ndVn:高橋洋子 Va:佐藤節子 Vc:坂水由佳[7]C.グノー:小さなスケルツォ Cb:佐藤康正 望月隆史
[8]モーツァルト:弦楽四重奏曲ニ短調 KV421より第3楽章と第4楽章 
1stVn:及川順 2ndVn:熊谷敬幸 Va:鈴木まほろ Vc:大森明子[9]フィリップ・ゴーベール:Piece Romantique(Fl, Vc, Pfのための) 
Fl:佐藤誠 Vc:大森明子 Pf:滝沢善子
[10]G.ガブリエリ:ソナタ ピアノ・フォルテ 金管とヴィオラのための八重奏
Tp:渡辺則之・柴崎瞳 Vla:小笠原信子 Tb alt:遊佐誠道 
Tb tenner:西田旬・宮澤寛行 Tb bass:盛川政義 
Tub:及川明宏 
[11]J.ホロヴィッツ:ミュージック・ホール組曲 金管五重奏 
Tp:加藤信行・柴崎瞳 Hr:小林杜子 Tb:遊佐誠道 
Tub:及川明宏 
[12]モーツァルト 交響曲第29番 
1stVn:米倉久美・片桐薫・長瀬泰樹 2ndVn:及川順・熊谷敬幸・高橋洋子 Va:鈴木まほろ・小笠原信子・佐藤節子 Vc:大森明子・柳村提亮 Cb:望月隆史* Ob:星野麻記・佐藤義仁 Hr:山内貴義・綿引芙美子

◆このごろの斎藤純

〇弘前、遠野界隈と旅がつづいた。梅雨入りしていたというのに(しかも、ぼくは名うての雨男だというのに)お天気に恵まれて、いい取材ができた。

バルトーク弦楽四重奏曲全集/ハーゲン弦楽四重奏団を聴きながら