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◆第129回 和の響きを聴く(7.august.2006)

黒澤箏合奏団 第33回演奏会
2006年7月16日(日) 午後2時 岩手県民会館中ホール

黒澤和雄氏一門の演奏に加え、およそ一年ぶり(第100回参照)に黒澤有美さんの演奏が聴けるとあって楽しみに出かけた。県民会館中ホールは立ち見が出るほどの盛況だった。

          プログラム
〈第1部〉
[1]八千代獅子 藤枝検校 原曲・久本玄智 編曲
  黒澤箏合奏団(箏・十七絃・三絃)
[2]箏・十七絃による小組曲   山本邦山 作曲
  岩手女子高等学校箏曲部
[3]越後獅子      峰崎勾当 三絃原作・八重崎検校箏手付
  黒澤箏合奏団(箏・十七絃・三絃)

〈第2部〉
[4]雪に寄す 長谷川恭一 作曲
  盛岡第二高等学校箏曲部
[5]夢あわせ 夢たがえ     吉松 隆 作曲
  黒澤有美(二十絃箏)、安藤満里(クラリネット)、山口あうい(ヴ ァイオリン)、三浦 祥子(チェロ)
[6]Rapture          Yumi 作曲
  黒澤有美(二十絃箏)
[7]木もれび 吉崎克彦 作曲
  黒澤箏合奏団(箏・十七絃・三絃)

 ご覧のとおり、古典と現代曲、それに委嘱作品の初演([4])と意欲的なプログラムに、客席も真剣に聴きいっていた。曲のあいだに入る黒澤和雄さんによる解説がまた面白く、演奏を楽しんでもらおうという気持ちが伝わってきた。
 盛岡第二高等学校箏曲部の委嘱作品[4]を作曲した長谷川恭一さんもステージに呼ばれ、作品についてお話しをされた。これは「京都の雪」をイメージしたという。雪にもいろいろな降り方がある。特殊奏法を交えた斬新な曲で、この日の大きな収穫だった。
 実は長谷川さんが昨年、同部のために書いた「遙かなる道」は全国高校文化祭で文部科学大臣奨励賞を受賞している。それだけにプレッシャーが大きかったとのことだが、堂々たる作品に仕上がっていたと思う。これだけ起伏に富んだ箏曲も珍しいのではないか。

 その後につづく各曲も素晴らしく、まさに怒濤の勢いで楽しませてもらった。[5]を生演奏で聴けるのは、盛岡にこれだけ優秀な音楽家がそろっているということで、何だか誇らしい気持ちにさえなった。
 [6]は「9.11」事件を契機に黒澤有美さんがつくったオリジナル曲。旋律の多様さと卓越した演奏技術がみごとにマッチしていた。幼少のころから箏に親しみ、箏の響きを知り尽くしている有美さんならではの大曲だった。
 有美さんは今年4月、音楽の殿堂であるカーネギーホール(ニューヨーク)でのリサイタルを成功させている。その報告をされた黒澤和雄さんが師匠の顔ではなく、父親の顔をかいま見せて声を詰まらせたときはこちらも胸が熱くなった。

 我々は日本の古典文学を学校以外で読むことがないように、邦楽に接する機会がほとんどないに等しい。それは何か間違っているのではないか……とクラシックやジャズしか聴かないぼくも反省を込めて思う。
 いつだったか、黒澤さんが「(高校生に)まず正座から仕込むのです」とおっしゃっていたことを思いだした。
 箏と三絃による和の響きを楽しみつつ、いろいろと考えさせられるコンサートだった。

◆このごろの斎藤純

〇カシオペア映画祭(7/29、一戸町萬代館)に行ってきた。同映画祭に「参加」(映画祭ではお客さんも「参加」と言います)するのは初めてだが、手作りの雰囲気がなかなかよかった。続きは7月30日のブログ「流れる雲を友に」をご覧ください。

「ブラジルの魂〜ニャタリ・ギター作品集〜」を聴きながら