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◆第141回 誰もが楽しめる絵画展(22.january.2007)

山寺 後藤美術館所蔵
ヨーロッパ絵画名作展 〜宮廷絵画からバルビゾン派へ〜

 19世紀フランス絵画といえば印象派のことと思いがちだが、印象派が広く一般に受け入れられるようになったのは20世紀に入ってからだ。当時、フランスで主流だったのは、本展覧会に展示されているような作品だった。つまり、アカデミズム(官展系)の絵画である。

 アカデミズムという字面から難しい感じを受けるかもしれないが、決してそんなことはない。なにしろ、美術の本流だったのだから、とてもわかりやすい。印象派以降に登場する「うまいんだか、へたなんだかわからない」ような絵は一枚もない。抽象画もない。いい意味でも悪い意味でも保守的な肖像画と風景画(しかも、かなり粒揃いの作品)なので、あまり構えずに楽しむことができる。
 ぼくが行った日も、高校生から、そのお祖父さんお祖母さんまで幅広い世代の方々が熱心にご覧になっていた。

 そのほか、ロココ絵画の華やかさに浸れるし、印象派と同じくらい我々日本人には好かれているバルビゾン派の作品も充実している。ちなみに、バルビゾン派を代表するミレーはしばしば「農民画家」と呼ばれるが、ミレーは農民を描いたから「農村画家」と呼ばれるのであって、農業と画業を両立した「農民画家」ではない(鍬を握ったことさえなかったともいう)。

 できれば、せっかく理想風景画の作品もあるのだから、風景画の小史がわかるような配置になっていればよかった。解説文では触れているだが、流れが今ひとつ掴みにくい。もっとも、そういう堅苦しいことは抜きして、もっぱら「目を楽しませる」ことが、こういう美術展の眼目なのだともいえる。

 それにしても、これだけの作品を近場で見られる山形の人々が羨ましい。山寺(立石寺のあるところ)にこういう美術館があることを知らなかった。あそこには二度ばかりオートバイで行ったことがあるのに。
 この美術館を建てた後藤季次郎は「実業家」と紹介されているだけだ。どういう人物なのか、インターネットで調べてもわからなかった。絵の集め方に筋が通っているから、どういう方なのかとても興味がある。

 日本では明治期の西洋絵画導入期から印象派を抵抗なく受け入れてきたので、我々はむしろアカデミズム絵画に馴染みが薄いかもしれない。このようにアカデミズム絵画を中心にしたコレクションは日本では珍しいだろう。

 かなわぬ夢ではあるけれど、岩手にも西洋美術を収めた美術館がほしい(岩手県立美術館は岩手に関係する作家の明治以降の作品収集に限られているので西洋美術は含まれない)。岩手出身の財閥で、美術に造詣の深い方って、いないんでしょうか。

◆このごろの斎藤純

○ある昼食会でバッケ(フキノトウ)の天麩羅が出た。これ、春を告げる食材のはず。いったい今年の天気はどうなっているんだろう。
○知人から20数年前のロードスポーツ(レース用の自転車)をもらった。暖冬で雪がないから、レストア(といっても、タイヤとワイヤー類を交換する程度だが)が終わりしだい、遠乗りに出かけるつもりだ。

『ガブリエーリの饗宴』を聴きながら