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◆第146回 印象派の殿堂(2.april.2007)

オルセー美術館展 ― 19世紀 芸術家たちの楽園
東京都美術館 2007年1月27日(土)〜4月8日(日)

 行く前からさんざん「長蛇の列だよ」とか「混んでいて、ゆっくり観られなかった」と聞かされていた。ところが、意外にも並ばずに入場できたし、比較的ゆっくりと観ることもできた(もちろん、他の展覧会とは比較にならないほどの人出でしたが)。

 ぼくがこれまで一番熱心に観てきたのは、やはり印象派の絵画だと言っていい。日本にもいいコレクションがあるし、展覧会の数も多いおかげだ。

 印象派を観るためにパリ、ロンドン、ニューヨーク、フィラデルフィア、ワシントンの美術館も訪れている。ニューヨークはおそらくパリに次いでコレクションが充実している。本国フランスで認められるより先に、ニューヨークは当時の前衛である印象派を好意的に受け入れたからだ。

 とはいえ、印象派といえば当然ながらオルセー美術館なのだ。ここは印象派の殿堂、聖地である。オルセー美術館に行けば、印象派とは何なのかが、そのスタートから目にすることができる。

 そのオルセー美術館から140点もの作品(写真、彫刻などを含む)が、日本にやってきて公開されている。興奮しないわけにはいかない。

 会場に入ってすぐにジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラーの〈灰色と黒のアレンジメント第1番、画家の母の肖像〉がある。
 もうこれだけで感激のあまり目眩を覚える。ホイッスラーとジョン・ラスキンのあいだの裁判沙汰、ポール・セザンヌとエミール・ゾラの決別など印象派に関わるエピソードを思いだしながら、観てまわった。

 改めて言うまでもなく、名品揃いだ。黒い色使いが印象的なマネ、移ろいゆく光の一瞬をとらえようとしたモネ、セザンヌの〈サント=ヴィクトワール山〉、エドゥアール・マネの〈すみれのブーケをつけたベルト・モリゾ〉など一々作品名を挙げるとキリがない。ゴーギャン、日本人の好きなゴッホ、ルノワールの前はやはり凄い人だかりだ。

 一通り観終えて、もう一度頭から観なおした。それでも、立ち去りがたかった。時間がゆるすかぎり、ずっとそのままとどまっていたかった。

 パリを訪れたときのことが脳裏によみがえってきた。オルセー美術館で、丸一日過ごし、何度も何度も同じ絵を観た。それでも、美術館を出るときに後ろ髪を引かれる思いがした。

 最後にオルセー美術館に行ってから、もう十年も経っている。パリは東京と違い、まちが大きく変わることはないけれど、最近のようすを無性に知りたくなった。

◆このごろの斎藤純

○本格的なツーリング、サイクリング・シーズン到来と思いきや、盛岡ではドカ雪が降った。でも、真冬の雪と違って、「どうもすぐに融けてしまうもんね」と心に余裕がある。
○世間は新年度だ。今年度も花巻市萬鉄五郎記念美術館運営委員、岩手県立美術館協議委員、盛岡市行財政構造改革推進委員をおおせつかることになった。利用者、市民の立場から、臆することなく発言していきたいと思っています。もちろん、そのための勉強もしないといけませんね。

リュリ:太陽王のためのバレエ音楽を聴きながら