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◆第184回 ハイブラウなアコースティック・サウンド(29.September.2008)

Ann Sally + Port of Notes with 小池龍平
Morioka→Sendai Tour 『Go around grove?』

日時:2008年9月13日(土)
開場14:00開演15:00
会場:岩手県公会堂 大ホール
主催:carta http://carta.blog.shinobi.jp/

 出演者もユニークなら、この会場(岩手県公会堂)もユニークだ。こういう企画には大きな拍手を送りたい。
 昭和2年(日比谷公会堂より1年先)、岩手県公会堂のこけら落とし(オープニング記念コンサート)には、太田クワルテットが出演している。このとき、コンサートに行くことができなかった宮沢賢治は「今宵楽聖はここにあり」という祝電を打っている。
 その後、音楽に限らず、演劇や映画など芸術文化の拠点として、公会堂は県民に愛されてきた。
 現在、公会堂はNPOによって保存活用されている。
 この伝統ある公会堂に入ったことのない方にとっても、このようなコンサートは、足を運ぶ絶好の機会になる。
 出演者にとっても、公会堂は何か特別な意味があるようだ。公会堂の保存活動に熱心に取り組んできた三崎ともやすさんは「このホールには独特のオーラがあり、ミュージシャンを刺激する」とおっしゃっていた(第73回参照)。

 また、ここで自己が率いるビッグバンドの素晴しい演奏を聴かせてくれた秋吉敏子さんもこのステージに立ったことを喜んでいらした(第51回参照)。

 前置きが長くなってしまった。
 この日のコンサートは、まず小池龍平にたまげた。マイケル・へッジス(ギター)とリー・オスカー(ブルースハープ)とアート・ガーファンクル(ヴォーカル)を合体させたような(いずれも古いミュージシャンを引き合いに出して申し訳ない)ミュージシャンなのだ。それに、作詞作曲もやるのだから、鬼に金棒だ。
 アン・サリーはぼくより一回り以上年下なのに、同時代の音楽体験をしてきたような選曲で、親しみを覚えた。
 岩手県公会堂は外から音が入ってくる。八幡さんのお祭りの山車が通って、お囃子が聴こえてきたが、アン・サリーはそれさえ歌詞に取り込んでしまった。アンコールで、マリア・マルダーを歌ったのにも驚いた。

 最も大きな収穫は、畠山美由紀を知ったことだ。何よりも声が素敵だ。低音には深い悲しみを秘めた凄味のような響きがあり、高音は切ないほど美しい。一関のジャズ喫茶ベイシーのマスター菅原正二さんの「上手な人の楽器は悲しい音がする」という言葉を思いだす。上手な人の歌声も悲しい響きがするのだ。
 オリジナル曲もよかった。今までにぼくが聴いたことのない独自の音楽世界を持っていて、その曲のどれもが、実にしんみりと心に入ってくる。このベテランの存在を知らなかったのは恥ずかしいかぎりだが、長く記憶に残るだろう。

 語弊を恐れずに言うなら、いずれもハイブラウな音楽だった。こういうハイブラウな音楽がちゃんと支持されている。それもぼくは嬉しかった。
 このコンサートの後、ぼくは畠山美由紀のCDばかり聴きつづけている。

◆このごろの斎藤純

○早いもので今年も文士劇のシーズンになった。本番は12月6日、7日だが、練習がもう始まるのだ。今年はゲストにお馴染みの内館牧子さん、井沢元彦さんをお迎えして『宮本武蔵と沢庵和尚』です。ぼくは佐々木小次郎役なので、地のままでいけます(笑)。

ヨセフ・スーク:ア・サマーズ・テイルを聴きながら