2008年に見たり聞いたりしたものを振り返り、この連載から洩れてしまったものをいくつかピックアップしようと思う。
『今宵は Chaconne(シャコンヌ)三昧♪』(3月20日 盛岡市民文化ホール小ホール 午後7時開演)
これは、シャコンヌ(バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ二番から)のさまざまな編曲版を聴くというコンサート。実はこれ、ぼくが提案した企画だったので、その責任をとって司会もつとめた。
オリジナルを山口あういさんのヴァイオリン独奏で、ブラームス編曲版とブゾーニ編曲版を滝沢善子さんのピアノ独奏で、セゴビア編曲版を木村悟さんのギター独奏で、弦楽合奏版を弦楽合奏団バディヌリの演奏で聴いた。この曲に限らず、クラシックマニアは編曲版を嫌いがちだが、それぞれ個性があって聴き応えがあった。
こういう演奏会を地元の音楽家たちで開催できるということ、 同じ曲を何度も聴くというマニアックな内容だったにもかかわらず、たくさんの方にお越しいただいたことは特筆しておきたい。
『マリア・パヘス舞踏団 』(5月10日 東京国際フォーラムC 午後2時開演)
年に一度くらいのペースでフラメンコなどスペインの舞踏団の公演を見ている。これは、アントニオ・ガデス舞踊団、マリオ・マヤ舞踊団、ラファエル・アギラル舞踊団などで主演ダンサーとして活躍した後に独立したマリア・パヘスの「セルフポートレイト」の日本初演。
昨今のショーアップされた舞台と比べると地味というか、よりスポンティニアスなフラメンコという印象を受けた。が、もちろん中身はけっこうモダンだ。
音楽にもそれはあらわれていた。ギター2本(脚を組まない、古典的な演奏姿勢)、カンテが男女ひとりずつ、カホン、それに珍しいことにチェロ(これがよかった)という編成。ちなみにカホンは、パコ・デ・ルシアが使うようになってフラメンコにもひろまった。
第8回おでってリージョナル劇場『街盛岡祭賑』(11月2日 6時30分開演 プラザおでってホール)
アマチュア劇団の数がとても多いことで知られる盛岡。その盛岡の舞台人が結集して、みごとな人情劇をつくりあげた。
脚本はわらび座小劇場にも作品を提供するなど 進境著しい道又力さん(彼が脚本を書くようになってからの盛岡文士劇も年々レベルアップしている)、演出はベテランの坂田裕一さん。
達者な役者陣を相手に、素晴しい演技を披露した岩手放送の江幡平三郎さんは、今年の大きな収穫のひとつだと思う。笑いのなかにほろりと涙させる、盛岡山車300年記念に相応しい演劇だった。
(つづく)
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