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◆第197回 オールドマスターを観る(6.April.2009)

『ルーヴル美術館展−17世紀ヨーロッパ絵画』
09年2月28日−6月14日 国立西洋美術館

 ルーヴル美術館に初めて入ったとき、そのあまりのスケールに目の眩むような思いがしたものだ。だから、最初に訪れたときの印象はあまり残っていない。ただただ茫然と歩きまわって、へとへとに疲れた記憶意外は。
 そのときの経験で、何がどこにあるかを調べておいて、目的のものだけを観るという方法をとることを学んだ。

 この展覧会はルーヴル美術館の膨大なコレクションのなかから、「黄金の世紀」と呼ばれる17世紀の絵画71点を集めている。規模はかなり大きいが、ルーヴル美術館と比べたらほんの一画が移動してきたにすぎない。
 でも、数を絞ってあるおかげでルーヴルで観るよりもゆっくりと観ることができた。

 つい先日、フェルメールを観たばかりという気がするが、この展覧会にもフェルメールが来ている(日本にいながらにして、世界中のフェルメールを観ることができるのだから、実にありがたいことだ)。レンブラント、プッサン、ルーベンスなどの巨匠の作品も充実している。
 十年くらい前までは、オールドマスター(18世紀以前の巨匠による作品)を観てもあまり心を動かされることはなかったが、古楽を聴くようになったことが影響してか、印象派以前の絵画にも少し親しみを抱くようになってきた。今回も楽器が描かれた作品がたくさんあって、楽しむことができた。

 もっとも、オールドマスターを本当に理解するためには、やはり聖書とギリシア神話などの素養が必要だ。さらに、本展覧会では当時の科学の発達が絵画の題材に少なからず反映されていることを教えてくれる。
 美術館では単に色や形の美しさで酔わせてくれるばかりではなく、得ようと思えば、西洋史、宗教と宗教史、民衆や貴族の生活様式や衣装の歴史などさまざまな情報の宝庫でもある。
 ぼくはそれらにまったく疎いから、せいぜい楽器の変遷や、当時の音楽に思いを馳せる程度だ。西洋史をちゃんと勉強しておくべきだったな、と美術館に入るたびに後悔する。

◆このごろの斎藤純

○就任したばかりの石神の丘美術館で、ぼくの企画による『印象いわて -7人の画家の表現-』を今月25日(土)から開催します。岩手ゆかりの7名の画家:石川酉三、板垣崇志、重石晃子、杉本みゆき、高橋和、長谷川誠、畠山孝一の作品およそ20点(予定)を展示。25日午後2時からは『森から生まれたアート』と題して、講演も行います。一見、自然とは何の関わりもなさそうな絵画や音楽が実は……という内容です。無料ですのでぜひお越しください(展覧会の入場料300円は別途必要です)。

ブルース・アライヴ/ゲイリー・ムーアを聴きながら