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◆第198回 蜷川実花展を観る(20.April.2009)

『蜷川実花 −地上の花、天上の色−』展
岩手県立美術館 2009年4月11日[土]−5月31日[日]

  昨年から期待していた展覧会が、とうとう開幕した。初日に行なわれた蜷川実花さんと松井みどりさんによるアーティスト・トークは、一時間以上前に定員オーバーとなった(入れなかった人たちはグランドギャラリーのスクリーンでライヴ中継を観た)。
こんなことは県美はじまって以来だ。蜷川さんの人気ぶりがよくわかる。

作品は初期のものから、未発表の最新作まで7つのコーナーに分けて展示され、さらにタレントやモデルのポートレートのコーナーも独立している。総点数450点以上という大規模な展覧会だ。

これだけの作品数を展示するのは大変な苦労があったと思う。蜷川自身のアイデアが反映されているそうだが、会場全体がコラージュ作品になっている。広い岩手県立美術館を自由な創造空間にした蜷川実花と学芸員の手腕にただただ敬服する。このスケール感が醸しだす陶酔感は、2003年の斎藤義重展以来のものだ。

もちろん、数だけの話ではない。
蜷川実花の作品を初めて観たとき、「ずいぶんつくる人だなあ」と思った。色がいかにも人工的なのだ。それは、花などを撮る場合にもあてはまる。私はてっきり何か特殊なフィルターを使ったり、凝ったライティングや画像処理をしているものと思いこんでいた。 ところが、この日のアーティスト・トークによって、「全然つくっていない」ことが判明した。我々が見ている同じものから、蜷川実花は独自の世界を生み出しているわけだ。
つまり、蜷川実花は我々とは異なる目を持っている。いや、我々凡人とは異なる目を持っていると言い直そう。もっと言うなら、それは天才の目だ。
「意識しないで撮ったらこう撮れていた」というのだから、かなわない。

評論家の松井みどりさんは蜷川作品をバロックと重ねて分析してみせたが(これはなかなか見事だった)、そのように分析されたご本人が「勉強になります」と応じて、これも楽しかった。

私はあと二回は足を運びたいと思っている。この人の作品は実に気持ちよく酔わせてくれるからだ。

◆このごろの斎藤純

○ゴールデンウィーク中に盛岡城跡公園で開催される「さくらジャズフェスティバルに、ぼくがギターで加わっている盛岡ホットクラフ四重奏団が出演することになった。『街もりおか』の編集と、石神の丘美術館の仕事に追われているなかで、練習を重ねている。
でも、もう桜が散ってしまった後のライヴになるかもしれませんね。

イザイ無伴奏ヴァイオリン組曲:ベンヤミン・シュミットを聴きながら