◆第216回 イタリア・オペラに酔う(25.January.2010)
ベルガモ・ドニゼッティ劇場『愛の妙薬』盛岡公演 2010年1月21日(木)夜6時30分開演 盛岡市民文化ホール大ホール 19世紀、イタリア・オペラはロッシーニ、ベッリーニ、ドニゼッティらの活躍によって黄金時代の幕をあける。 中でもドニゼッティは70ものオペラ作品を残していて、それだけ人気が高かったということを示している。 こんにち、それらのすべてが上演の機会に恵まれているわけではないが、『愛の妙薬』は多くのオペラ・ファンに愛されつづけている傑作のひとつだ。 ドニゼッティの名を冠したドニゼッティ劇場は、ミラノの北東、古い城壁都市ベルガモにある。3年前に初来日して大好評を博した。今回、二度目の来日公演を盛岡で観ることができるのは本当に嬉しくて、昨年から心待ちにしていた。 いやあ、噂にたがわぬ名演。近年では出色のオペラだった(っていえるほど、オペラをたくさん観ているわけではないのですが)。 物語は「インチキ惚れ薬」が巻き起こす、いかにもイタリアらしい喜劇だ。 ステージはワトーの絵を思わせるロココ調のセットで、演出はオーソドックスながら、随所に現代的なニュアンスが散りばめられていた。日本語のセリフのサービスが随所にあり(「音楽スタート」とか「小悪魔ちゃ〜ん」など)、大いに受けていた。 『愛の妙薬』は物語そのものもよくできていて面白いし、喜劇なのに(喜劇だから、というべきかもしれないが)とてもきれいなアリアもある。有名なテノールのアリア「人知れぬ涙」は、ロベルト・イウリアーノ(ネモリーノ役)が期待に応えて、たっぷりと聴かせてくれた。 残念ながらアディーナ役はトップスターのデジレ・ランカトーレではなく、リンダ・カンパネッラがつとめたが、ドゥルカマーラ役のマッテオ・ペイローネらの熱演とあいまって、不足は感じなかった。 ソリストの歌もさることながら、このオペラは合唱がまた素晴らしい。ちなみに、私はバレエやフラメンコ・ショーでも、ソロより群舞に惹かれる傾向がある。総勢180名という豪華な舞台を存分に堪能した。 ピアノを使うのもこのオペラの特徴だろう。指揮者による弾き振りもみごとだった。 カーテンコールのとき、演出家をステージに上げた。これは盛岡ではとても珍しい。もちろん、大きな拍手が起きた。 客席は世相を反映して7割ほどの入りで、ちょっと寂しかった。盛岡はオペラが年に1、2回と少ないので、たいていは満員になるのだが。 そんな会場で、知人と久しぶりに会った。商売が大変でコンサートどころではないという。 「このオペラに来るために、ほかの行きたいコンサートを我慢した。オペラは声楽、演劇、管弦楽、それにときとしてバレエも楽しめる総合芸術だから、1回のコンサートで何倍も楽しめる。今日は素晴らしい合唱も聴けて、まさに1粒で2度おいしいコンサートだった。また明日から頑張ろうという気持ちになったよ」 彼の言葉に私はただただ頷くばかりだった。 経済はドン底、政治は金まみれという世の中だからこそ、こういうアッケラカンとした陽性のオペラがありがたい。
◆このごろの斎藤純
○いつも意欲的なプログラムで音楽ファンを楽しませてくれるピアニストの滝沢善子さんのコンサートがある。今回はなんとオール協奏曲だ。実は私もバッハとモーツァルトでヴィオラを弾く。ぜひ足をお運びください。 ・3月6日(土)午後7時開演 岩手県民会館中ホール ・前売り 一般2,000円(当日は2,500円)カワトク、アネックスカワトク、佐々木電気、プラザおでって、岩手県民会館で発売中
キッス・ザ・ギタープレイヤー/クリムトを聴きながら