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◆第228回 素晴らしき音楽の仲間たち(19.July.2010)

Poor People’s Paper第7回 定期公演
「哀愁のシチリアーノ」
2010年7月3日(土)午後7時から
盛岡市民文化ホール(マリオス)小ホール

                   
  長谷川恭一さん(盛岡在住)が主催するPoor People’s Paper(この言葉に特に意味はなく、語感で付けたらたまたまこうなったそうです)の定期公演があった。このコンサートは選曲が凝っているし、演奏も自由闊達で、いつも楽しませてくれる。
  今回のテーマは「哀愁のシチリアーノ」。なんとなく、大人の香りがする。
  シチリアーノは、バロック時代の「シチリア舞曲」あるいは「シチリア風に」という音楽用語。すごく大雑把に言うと、8分の6拍子「タンタンタン・タンタンタン」の始めの「タンタンタン」の一拍目を長く、二拍目を短くして「ターンタタン・タンタンタン」という感じになる。3拍子の曲は独特のメランコリックを帯びたものが多いが、シチリアーノはまた独特の3拍子の世界になる。

 演奏曲目は下記の通り。
〔第1部〕
 〈1〉J.S.バッハ : フルートとチェンバロのためのソナタ
   変ホ長調BWV.1031より第2楽章
 〈2〉モーツァルト : ピアノ・トリオ第7番 ト長調 K.564
              I アレグロ
             II テーマと6つの変奏曲
             III シチリアーノ風のロンド
 〈3〉ベートーヴェン : チェロ・ソナタ第3番 イ長調 Op.69 第1楽章
 〈4〉マリア・テレジア・フォン・パラディス : ピアノ四重奏のためのシシリア
〔第2部〕
 〈5〉ベートーヴェン : ヴァイオリン・ソナタ第7番 ハ短調 Op.30−2 第1楽章
 〈6〉長谷川恭一 : 弦楽四重奏のための4つの童話
               第1楽章 銀河鉄道の夜
              第2楽章 グスコーブドリの伝記
              第3楽章 シチリアーノ(いてふの実)
              第4楽章 鹿踊りのはじまり
〔アンコール〕
 〈7〉レスピーギ:リュートのための古い歌と舞曲 第3番より第3楽章 Siciliana
    Andantino〜.モーツァルト:ピアノ協奏曲 第23番イ長調より第2楽章 Adagio〜フォーレ:シチリアーノ Op.78〜.ベートーヴェン:交響曲 第7番 イ長調 Op.92より第1楽章
    Poco sostenuto-vivace〜ジョビン:ウェイヴ(編曲:長谷川恭一)


 〈1〉はバロック時代、〈4〉は古典派時代のシシリアだが、それぞれ偽作ともいわれているようだ。どちらも哀感漂う美しい曲だ。〈6〉は宮沢賢治の童話をもとにした弦楽四重奏曲で、どの楽章も長谷川さんらしい個性に満ちていた。清潔感があり、哀愁が滲んでいる。ひどく切なく哀しげではあるが、決して号泣はしない。朗らかに笑いはするが、高笑いではない。
そして、ときにメランコリックでもある。
第1楽章では蒸気機関車の走る場面が思い浮かんだし、第4楽章は鹿踊りを眺めて喜んでいる賢治の顔が浮かんでくるようだった。長谷川さんの音楽を深く理解している仲間たちだからこその演奏だ。そのことにも感銘を受けた。
ただひとつ、〈3〉の選曲がこのコンサートに適していたかどうか疑問が残った。テニスコートにボーリングのボールが転がってきたような違和感を覚えたのだ。
アンコールの〈7〉を本プログラムに入れてもよかったと思う。このメドレーは客席にとても受けていたが、「アンコールがよかった」といわれるのは、本来、あまり喜ぶべきことではないと指揮者の外山雄三さんもおっしゃっていた(が、指揮者はしばしばアンコールで受けたがる、とも)。

〔演奏〕
長谷川恭一(ピアノ)、 山口あうい(ヴァイオリン)、馬場雅美(ヴェイオリン)、三浦祥子(チェロ)、熊谷啓幸(ヴィオラ)。弦楽器の4人はラトゥール・カルテットとしても活動している。

◆このごろの斎藤純

○高熱と激しい咳に襲われて、ほぼ4日間、ダウンしていました。冬には風邪をひかないのに夏の初めに私はよく風邪をひいてしまうようです。みなさまもどうぞお気をつけください。
○岩手町立石神の丘美術館で、『須藤英一写真展 東北の道をゆく』を開催中です。ドライブ、サイクリング、ツーリングの途中にぜひお立ち寄りください。石神の丘美術館は、国道4号「道の駅 石神の丘」に併設しています。              

ドルネル:6つの組曲を聴きながら