トップ > 目と耳のライディング > バックナンバーインデックス > 2011 > 第249回




◆ 第249回 国境のない音楽 (30.May.2011)

第19回 盛岡ゾンタクラブ・チャリティコンサート
スパニッシュ・コネクション・ウィズ・フレンズ
〜Memories for you!〜
(あなたにだけ心からの贈り物)

2011年5月18日(水)午後6時30分開演
岩手県民会館中ホール

 ギタリストの伊藤芳輝さんはソロコンサートで盛岡に何度もいらしているし、伊藤さん率いるスパニッシュ・コネクションも盛岡で何度も私は聴いている。  今回はウィズ・フレンズとあって、いつもよりメンバーが多く、どんな音楽を聴かせてくれるのか楽しみに出かけた。
 まず、メンバーをご覧いただきたい。

伊藤芳輝(ギター)
平松加奈(ヴァイオリン)
会田桃子(ヴァイオリン)
田中詩織(ヴィオラ)
三間早苗(チェロ)
吉見征樹(タブラ、パーカッション)
伊藤寛康(ベース)

 伊藤さんのギターにリズム・セクション、それに弦楽四重奏団という編成だ。
 レギュラーのスパニッシュ・コネクションは平松さんのヴァイオリン一本なのだが、弦楽器が3本加わることで響きが厚くなり、色合いも豊かだ(視覚的な彩りも含む)。アンサンブルの妙を存分に味わうことができた。

 プログラムは下記のとおり。

1.愛の剣(NHK人形劇『新・三銃士』より)
2.禁じられた遊び
3.予期せぬ出来事(NHK土曜ドラマ『魂萌え!』より)
4.アトスのファルーカ(NHK人形劇『新・三銃士』より)
5.シェルブールの雨傘
6.可憐な瞳(NHK人形劇『新・三銃士』より)
7.アストゥリアス
8.歌劇『カルメン』より「ハバネラ」
9.ふるさと〜組曲『みちのく』より「イーハトーヴ幻想曲」
10.リベルタンゴ
(アンコール)007ジェイムズ・ボンドのテーマ

  冒頭、伊藤さんを「ギタリスト」と書いたが、伊藤さんはコンポーザー(作曲家)でもあるし、またアレンジャー(編曲家)でもある。5がフラメンコ風に演奏されたのにはびっくりした。

 それにしても、フラメンコのギタリストというのは、数ある楽器奏者のなかでもつくづく大変な仕事だと思う。まず、フラメンコ・ギターはテクニックが難しい。超絶技巧が特別なものではなく、フラメンコを演奏するうえでは基本なのだ。
 そのうえ、オリジナルのフレーズを弾かなければならないから、優れた創造性が要求される。
 とはいえ、伊藤さんの音楽はルーツにフラメンコを持っているものの、もはやフラメンコを超えて、独自の音楽世界をつくっているといっていいだろう。それは国境を軽々とまたいだ音楽世界でもある。
 共演したメンバーも、伊藤さんがご自身の音楽世界を築くうえで頼もしい腕達者揃いだ。こういう演奏なら何時間でも私は聴いていることができる。アンコールまで、本当にアッという間の2時間だった。

◆このごろの斎藤純

〇ようやくツーリングに出かける余裕ができた。この場合の余裕には、時間的なそれに加えて、精神的な面も多分に含まれている。美しい初夏の岩手の山々に、明日を生きる勇気を与えてもらった。
〇取材がてら平泉へ行く機会があった。毛越寺、中尊寺をまわったが、あんなにひとけのない平泉は初めて見た。観光地が大震災(風評や自粛ムードも)から受けているダメージはそうとう深刻なようだ。世界遺産指定が転機となってくれればよいのだが。

マーラー:「大地の歌」を聴きながら