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◆ 第272回  杜の都でバッハを聴く (28.May.2012)

仙台フィルハーモニー管弦楽団 第265回定期演奏会
2012年5月26日(土)午後3時開演
仙台市青年文化センター・コンサートホール

  仙台フィルがバッハのオーソリティである巨匠ヘルムート・ヴィンシャーマンを迎えて、管弦楽組曲全4曲の演奏会を行なった。
  この作品、作曲年も順番も明らかになっていないそうだから、番号は便宜上のものにすぎない。この日は楽器編成の大きい第4番、弦楽合奏とフルート独奏による第2番、「G線上のアリア」として知られている楽曲「エア」を持つ第3番、そして再び編成の大きい第1番という順で演奏された。

  ヴィンシャーマンは指揮棒を持たず、仙台フィルからシャープなバッハ演奏を引き出していた。ヴィンシャーマンの指揮は、どこか合唱指揮を思わせた。
  第2番の演奏後、自らブラボーと声を上げて、フルート独奏の戸田敦の熱演を讃えた。会場からの拍手も鳴りやまず、ヴィンシャーマンに背中を押されるようにしてステージで再登場すると、シュターミッツの「ロンド・カプリチオーソ」をアンコールに演奏。超絶技巧で聴衆をまた唖然とさせた。

  第3番の演奏後も「ブラボー」と仙台フィルを讃えた。最後の第一番を終えるとコンサートマスターの神谷美穂に賞賛と労いの拍手を送った。
  この組曲を通して聴くと、バッハのさまざまな面に触れることができる。教会で演奏するための宗教音楽ではないにもかかわらず、随所にバッハらしい敬虔な信仰の響きがある。また、ヴィヴァルディからの影響も聴くことができる。ついでいうと、バッハから強い影響を受けたメンデルスゾーンはもちろんのこと、シューマンを連想したところもあり、バッハの大きさを思い知らされた。

  アンコールにはトランペットの3人をステージ上段に上げてバンダのように配し、バッハの「主よ 人の望みの喜びよ」の編曲版を演奏した。曲が終わった後、祈りを捧げるかのようにヴィンシャーマンは頭を垂れたまま動かなかった。
  このときの仙台の聴衆が立派だった。息をひそめて、物音ひとつ立てない。やがてヴィンシャーマンがゆっくりと会場に向かって体の向きを変えると、盛大な拍手が起こった。

  仙台フィルの常任指揮者を長くつとめていた外山雄三さんから、「仙台の人は洗練されている」と何度か聞かされていたが、こういうときにそれに触れることができる。

  それにしても、ヴィンシャーマンは1920年生まれだから92歳。5年前に盛岡バッハ・カンタータフェラインの演奏会(第143回)で『ヨハネ受難曲』を振ったとき、「もう日本に来るのはこれが最後かもしれない」という声が聞かれたものだが、いやいやどうして、嬉しいことにまだまだお元気だ。ますますのご活躍をお祈りしたい。

◆このごろの斎藤純
〇私の友人で、このコーナーの発案者でもある菅野雅弘さん(めんこいエンタープライズ専務取締役、岩手めんこいテレビ社員)が急逝された。私がFM岩手で音楽番組のディレクターをしていころからの付き合いで、この10数年あまりは「みちのく国際ミステリー映画祭」や「もりおか映画祭」で一緒に苦労をしてきた。まだショックから抜けきれない状態だが、彼の思い出を胸に、悲しみを乗り越えていかなければならないと自分自身に言い聞かせている。
デュリュフレ:レクイエムを聴きながら