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◆ 第277回  石神の丘美術館10周年記念コンサート(6.AUG.2012)

 岩手町立石神の丘美術館が、リニューアル10年周年を迎えた。
 リニューアルについて、ちょっと説明が必要だろう。19年前、岩手町立石神の丘美術館は誕生した。岩手町が建物をつくり、運営を民間の美術館に委託していた。
 10年前、その美術館があった場所を埋め立てて、道の駅をつくることになった。それに伴って、美術館の建物も新しくなった。これをリニューアルと呼んでいる。
 リニューアルには、建物が新しくなっただけでなく、運営の方針とそれに伴う企画展の内容などあらゆる意味が含まれる。民間の委託先にまかせっきりだった企画展が、自主企画になったことが大きい。
 そして、2009年度から私は芸術監督として迎えられた。
 この記念すべき年に、嬉しいことが重なった。リニューアル後の来館者数が7月15日に20万人を突破したのである。単純計算して、一年に平均して2万人が訪れたことになる。人口1万5000人に満たない自治体の小さな美術館に年平均2万人の入館者があるのは、地方の文化施設の多くがいわゆる「ハコモノ」化している中にあって、実はとても画期的なことだ。
 多くの方の興味を惹く企画展を開いてきた実績はもちろんのこと、足を運んでくださる方に恵まれている地域性を特筆しておきたい。
 石神の丘美術館では、リニューアル10周年を記念する無料のギャラリー・コンサートを7月21日午後2時から開いた。
 企画したのは2年以上前だった。そのときは、入館者20万人記念の日も迎えることになるとは思ってもいなかったが、奇しくもふたつの記念が重なった時期に、記念コンサートを開くことができた。 出演は岩手町出身のパーカッショニスト板垣アヤ子さん、石神の丘美術館で毎年コンサートを開いている弦楽四重奏団ラトゥール・カルテット。そして、このコンサートの目玉は、盛岡在住の長谷川恭一さんが石神の丘美術館のために作曲した『石神の丘で』の初演である。
 板垣アヤ子さんにはマリンバを演奏していただいた。マリンバというのは、大きな木琴で、各鍵ごとに長さの異なる共鳴チューブを持っている。マリンバと弦楽四重奏団という組み合わせの曲はとても珍しく、企画段階では既成の作品を演奏していただこうと思ったのだが、いくら探してもこの編成のための楽曲を見つけることができなかった。
 それならば、と長谷川さんにお願いすることになった。結果的に大正解だった。作品そのものはもちろん、マリンバと弦楽四重奏の音の響きもよく、この組み合わせによる音楽はもっと広まっていいとも思った。
 この曲をつくっている間に、長谷川さんのお母さまが亡くなられ、追慕の思いも反映された作品になった。美術館にふさわしい曲調で、お越しいただいた100名近い聴衆にも満足していただけたようだ。
【プログラム】
第一部 ラトゥール・カルテット
ブラームス:弦楽四重奏曲第2番より 第1楽章、第2楽章
ナイジェル・ヘス<長谷川恭一編曲>:ラヴェンダーの咲く庭で
宇野誠一郎<長谷川恭一編曲>:ひょっこりひょうたん島
第二部 板垣アヤ子
片山あをい:UTA
成田為三:浜辺のうた
アリス・ゴメス:GITANO(Gypsy)
第三部 板垣アヤ子、ラトゥール・カルテット
長谷川恭一:石神の丘で
1.乳母車
2.トリステ
3.風の歌
(アンコール)長谷川恭一:ノスタルジア
◆このごろの斎藤純
〇7月末、北海道ツーリングに出かけることにした。オートバイで北海道を走りまわるのは8年ぶりだ。そして、よく考えるとソロ・ツーリングは初めてだ(いつも、仲間が一緒だった)。まとまった休みをとることが難しく、毎年のように計画を立てては断念してきた。北の大地をのんびりと満喫してこようと思っている。
カメラータ・クリオージャを聴きながら