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◆第97回 ブラスの響き!(16.may.2005)

 昨秋、みちのく国際ミステリー映画祭のクロージング・セレモニーに盛岡シティブラスが出演した。その演奏を聴いたゲストの方々が「ええっ、アマチュアなの?」と驚いていた。同映画祭では警察や自衛隊のマーチングバンドの協力もいただいてきたので、ゲストのみなさんはてっきりその方たちの演奏だと思ったらしい。

 その盛岡シティブラスの第18回定期演奏会を聴いてきた。

 開場前、盛岡市民文化ホール大ホール前には長蛇の列ができていた。これは、そうとうな人気だ。小学生からお年寄りまで年齢層も幅広い。しばしばこの種のコンサートの聴衆は女性に偏りがちだが、男女比のバランスもとれている(ような気がした)。

 演奏がはじまるや否や、私はこの人気の高さに納得がいった。では、演奏曲目をご覧ください。

〈第1部〉

@ ライド/S.ヘイゾ作曲
指揮 梅野真和(当団トレーナー)

A 映面音楽「ベルリン陥落」/ D.ショスタコーヴィチ作曲・木村吉宏編曲
指揮 中台雅之(当団指揮者)

1.プレリュード
2.川のほとり
3.攻撃
4.庭にて
5.ゼーロフ高地の嵐
6.破壊された部落で
7.地下室
8.フイナーレ

 
〈第2部〉

B 「1941」/J.ウィリアムズ作曲・P.ラベンダー編曲
C 「海の上のピアニスト」/E.モリコーネ&S.ジョプリン作曲・長生淳編曲
指揮 中台雅之(当団指揮者)

D 「ピンクパンサー」/H.マンシー二作曲・小野崎孝輔編曲
E 「スターウォーズ」より/J.ウィリアムズ作曲・ロバートW.スミス編曲&D.ハンスバーガー編曲
・運命の戦い(エピソードI「ファントム.メナス」より)
・アナキンのテーマ(エピソードI「ファントム・メナス」より)
・アクロスザスターズ(“愛のテーマ")(エピソード皿「クローンの攻撃」より)
・帝国のマーチ(“ダース・ベイダーのテーマ")(エピソードV「帝国の逆襲」より)
・メインタイトル〜エンドタイトル(エピソードI「ファントム・メナス」より)
指揮 梅野真和(当団トレーナー)

〈アンコール〉
「世界の約束」〜映画「ハウル動く城」より〜
「スパイ大作戦のテーマ」

 一見しておわかりのとおり、映画音楽特集ですね。@もアクション映画のオープニングテーマのようなスピーディな曲で、コンサートの幕開けにはぴったり。
 MC(マスター・オブ・セレモニー、つまり司会者)がちゃんといることに驚いた。これは珍しい。しかも、そのMCは劇団亜樹(今年30周年を迎える老舗です)の代表をつとめる高橋烈雄さんである。センスのいい選曲もそうだが、「みんなに楽しんでもらおう」という姿勢に貫かれている。第2部が「20世紀フォックス映画のファンファーレ」(アレフレッド・ニューマン作曲&真島俊夫編曲)でスタートする演出もよかった。

 演奏の質も高い。吹奏楽団はただ元気で迫力があるだけと思っていると大間違いで、ショスタコーヴィチでの複雑なアンサンブル、「海の上のピアニスト」のソプラノサックスとトランペットのソロ、「ピンクパンサー」のテナーサックスとバリトンサックスのソロなどを堪能した。
 オーケストラと違って、吹奏楽団は常に吹きっぱなしだから、体力も消耗するだろうに最後まで疲れを感じさせなかった。ちなみに僕は、曲ごとに持ち場を移動して、たくさんの楽器をこなすパーカッショニストの活躍を楽しんだ。

 この日、指揮台に立った二人の指揮者にも感銘を受けた。ダイナミックな梅野さん、スマートな中台さんと個性があり、それが音楽にも反映している。それにしても、まあ、こんなにカッコいい指揮者が盛岡にいるのか、と驚いた。
 高橋さんの軽妙洒脱なお喋りと迫力ある演奏で、時間は瞬く間に過ぎた。

 ところで。
 曲目紹介のところに作曲家と並んで編曲家が併記されています。@以外は吹奏楽のために書かれた曲ではなく、弦(ヴァイオリンなど)も入っているオーケストラ向けの曲なので、管楽器だけで演奏するには編曲が必要なのです。で、この編曲ってやつが吹奏楽団の「限界」と僕は先入観を持っていたので、あまり熱心に聴こうとはしてこなかった。
 だが、僕は間違っていた。盛岡シティブラスの演奏を全身で受けとめながら、吹奏楽の楽しみはオリジナルとの比較では語れないし、語るべきでもないということを教わった。これは編曲ものを主たるレパートリーにしてきたクラシックギターの問題とも重なっている。

 華やかなステージだったが、この日のために地道な練習の積み重ねがあったはずだ。しかも、メンバーはそれぞれ仕事を持っている人たちだ。集まる時間もままならなかっただろう。ステージが華やかであればあるほど、そういった裏の姿は忘れられがちだ。
 ひっそりとここで敬意を表したい。

 −盛岡シティブラス概要−
 盛岡シティブラスは1987年11月、岩手県盛岡市を中心に吹奏楽を愛する社会人が集まって結成された。年1回の定期演奏会、各種の訪問・依頼演奏、吹奏楽コンクール・アンサンブルコンテスト等への出場など、年間を通して活動している。
 これまでの定期公演会では、アルフレッド・リード(指揮)、小倉清澄(Cl.TKWO)、萩谷克己(Tb.TKWO)、淀彰(指揮)&米沢吹奏楽愛好会、須川展也(Sax.TKWO)、奥山泰三(Tp.TKWO)各氏・団体と共演してきた。吹奏楽コンクールには、1988年に初出場(全国大会出場)し、これまで東北大会に10回出場している。

◆このごろの斎藤純

〇紫波三山のうち、東根山と不動岳を縦走した。途中、突然変異種の白いカタクリを見つけた。まだ俗化していない山だから、豊かな自然が残っている。このままにしておきたいものだ。
〇ようやく花粉症の苦しみから解放された。

ムーヴメント/菅野義孝を聴きながら