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◆第157回 伊藤奏子のブラームス II(3.september.2007)

2007年8月16日(木) 18:00開演 岩手県民会館大ホール

 カンザスシティ・オーケストラでコンサート・ミストレス(コンサート・マスター)をつとめられているヴァイオリニストの伊藤奏子さん(宮古市出身)が、3年ぶりに岩手で演奏を聴かせてくださった。
 海外で活躍をはじめてからも伊藤奏子さんはふるさと岩手の音楽仲間たちと交流をつづけていて、01年にはシベリウスのヴァイオリン協奏曲、04年にはブラームスのヴァイオリン協奏曲を演奏している(第78回参照)。
 前回につづいてブラームスを取り上げたので、『伊藤奏子のブラームス II』というコンサート・タイトルが付いた。演奏曲目は下記のとおり。


[第一部]
〈1〉ブラームス:悲劇的序曲
〈2〉チャイコフスキー:「雪娘」よりメロドラマ
〈3〉アレンスキー:チャイコフスキーの主題による変奏曲(抜粋)

[第2部]
〈4〉ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲

[アンコール]
〈5〉ベルリオーズ:ハンガリー行進曲

演奏:寺崎巌指揮 オーケストラ・アンサンブル2007
   伊藤奏子(ヴァイオリン)
   マーティン・ストーリー(チェロ)

 〈2〉はこの春に亡くなられたムスティラフ・ロストロポーヴィチが小澤征爾氏と共に岩手県内をまわられたコンサート・キャラバン(第106回参照)の際に取り上げた曲で、とても印象深い。寺崎さんはこの演奏をロストロポーヴィチに捧げ、聴衆も黙祷をした。

 〈4〉は伊藤奏子さんのヴァイオリンと、夫でバーク音楽大学教授のマーティン・スートリーのチェロによる夫婦共演(この曲の夫婦共演は、日本では例がないのではないだろうか)。
 この曲はブラームスが交響曲5番のつもりで構想していたものを、二重協奏曲に転換したもので、協奏曲とはいえ、交響曲並みの内容を持っている。ということは、ソリストはもちろんのこと、オーケストラに要求されるものも生半可ではない。
 伊藤さんはこの日のために集まったオーケストラ・アンサンブル2007の指導にもあたり、この難曲の演奏に一役も二役も買った。

 マーティンさんのチェロは豊かな音色と音量でもって包容力と存在感に溢れ、堂々たる巨匠の演奏だった。伊藤奏子さんのヴァイオリンは以前にも増して艶っぽくなっていた。
 そして、この難曲をみごとにまとめあげた寺崎巌さんの手腕に、改めて感銘を受けた。

 ぼくはブラームスではこの曲が最も好きだ。CDはたくさん持っているが、実演を聴いたのは初めてである。
 なにしろ、二人のソリスト(ヴァイオリニストとチェリスト)を必要とするし、いくら名手を揃えても、その二人の息が合わないと悲惨なことになる。だから、この曲はあまり演奏されることがない。
 実演を聴くことはぼくにとって夢だった。その夢が、岩手出身の仲間たちの演奏でかなった。こんなに嬉しいことはない。
 もう何度も書いたことだが、音楽を愛してきて本当によかった。
 なお、このコンサートは岩手県民会館と弦楽合奏団バディヌリの主催によって行なわれた。岩手県民会館は指定管理者になって以降、岩手県民オーケストラのコンサートを主催するなど地元の音楽振興に力を入れていることを明記しておこう。

◆このごろの斎藤純

○おかげさまで前回お知らせした『銀輪の覇者』(早川書房)が好評だ。単行本のときよりも反応が速いそうだ。この場を借りて、お礼申し上げます。
○夏の恒例、北海道ツーリングに行ってきます。今回は道内でキャンプをしながらのツーリングです。

ダ・ミラノ:リュートの為の作品集を聴きながら