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◆第161回 深まりゆく秋に響く弦楽合奏(29.october.2007)

ト弦楽合奏団バディヌリ 第11回定期演奏会
『弦楽アンサンブルによるヨーロッパ音楽の旅』
10月20日(土)午後7時開演 岩手県民会館大ホール

 選曲の妙が光るバディヌリらしいコンサートだった。まず、曲目をご覧ください。


〈1〉ガルッピ:弦楽4声のための協奏曲(イタリア)
〈2〉アルビノーニ:弦楽のための協奏曲(イタリア)
〈3〉メンデルスゾーン:弦楽のための交響曲第2番(ドイツ)
〈4〉グリーグ:二つの悲しき旋律(ノルウェー)
〈5〉ラヴェル:弦楽四重奏/弦楽合奏版(フランス)
〈6〉ブリテン:シンプルシンフォニー(イギリス)

〈アンコール〉
ヴォーン・ウイリアムズ:イギリス民謡組曲より 火曜日には17歳
小田和正:どんど晴れ主題曲「ダイジョウブ」
織田哲郎:「負けないで」

  音楽でもってイタリア、ドイツ、ノルウェー、イギリスを旅するという趣向だ。なるほど、これらの曲はそれぞれのお国柄をよく伝えていると思う。
 ガルッピとグリーグはこのコンサートで初めて聴いたが、とてもいい曲だ。クラシックの世界にはこういう隠れた名曲がいっぱいある。
 ただ、集客ということを考えると、いわゆる定番曲をやっているほうが不安が少ない。お馴染みの曲なら、聴衆も安心して聴ける。
 けれども、見知らぬ土地をぶらつくことが楽しいのと同じで、知らない曲を聴くことも実は楽しいのだ。バディヌリのコンサートはいつもその楽しみを味わわせてくれる。

 どの曲もよく歌いつつ、華美にならず(これがバディヌリらしいところだ)、弦楽合奏ならではの透明感のある演奏だった。ラヴェルはちょっとまとまりに欠けたきらいがあったが。

 終演後、目を赤く腫らした女性客が「なぜか涙が出てきちゃって」と照れ笑いを浮かべていた。実はぼくもブリテンを聴いているときに、涙が込み上げてきて、止まらなくなった。ラヴェルはこの合奏団には向いていないと思ったが、ブリテンで大挽回をしたのはおみごと。

 アンコールの「ダイジョウブ」と「負けないで」は、盛岡市在住の作曲家でバディヌリのチェンバロ奏者でもある長谷川恭一さんによる編曲だ。
 お馴染みの曲が、長谷川さんらしいリリシズムあふれる編曲によって、あたかも弦楽合奏のために書かれた曲のように響いた。

◆このごろの斎藤純

○家族の一員だった猫が、15歳と8カ月の天寿をまっとうした。今はただ、ありがとうという思いでいっぱいだ。

フォーレ:レクイエムを聴きながら