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◆第192回 爽快なベートーヴェンを聴く(26.January.2009)

ニューイヤーコンサート2009
アリス=紗良・オット&オーケストラ・アンサンブル金沢
2009年1月16日(金)午後7時開演
盛岡市民文化ホール(大ホール)

  盛岡出身の原田智子さんが第一ヴァイオリンをつとめているオーケストラ・アンサブル金沢の演奏会があった。若干20歳ながら数々の受賞歴を誇るアリス=紗良・オットをソリストに迎えてのオール・ベートーヴェン・プログラムを聴いてきた。
 まず、プログラムをご覧ください。

〔第1部〕
〈1〉「エグモント」序曲 Op.84
〈2〉ピアノ協奏曲第5番 Op.73
〈アンコール〉リスト:ラ・カンパネルラ
 
〔第2部〕
〈3〉交響曲第7番 Op.92
〈アンコール〉 トルコ行進曲(オーケストラ編曲版)
  テレビドラマ『篤姫』のテーマ

 一曲目がはじまってすぐに、二つのことにびっくりさせられた。ひとつは指揮者の井上道義氏の動きがとてもダイナミックだったこと。〈3〉やその後のアンコールでは、まるでパントマイムのような動きも見られた。こんなにユニークな指揮は初めて見た。
 もうひとつは、実にシャープな演奏だったこと。その切れ味のよさは〈2〉、〈3〉でも存分に発揮された。
オーケストラ・アンサブル金沢はフル編成のオーケストラより人数が少ない(半分くらいと思っていい)。しかし、弦のパートはその割にずいぶん豊かな響きだった。
 編成が少ない分、各パートの輪郭がくっきりとして、聴いていて楽しかった。

 アリス=紗良・オットとの相性もよかったのではないだろうか。この若きヴィルトゥオーゾは、ピアノ協奏曲のなかでも最も人気の高い〈3〉を実に爽やかに、そして軽やかに弾いた。
 しばしばこの曲は『皇帝』と呼ばれるが、『皇帝』というよりも『皇太子』という印象を受けた。
もっとも、『皇帝』という題はベートーヴェンが付けたわけではなく、後世になって勝手にそう呼ぶようになった。また、音楽学者にいわせると、この曲をつくったときのベートーヴェンの心情は反ナポレオンだったから、『皇帝』はまったく相応しくない題だという。
 この大曲の後に、「ラ・カンパネルラ」を弾いたのだから、これもまた驚かされた(ピアノをやっている方にお尋ねしたいが、普通、この曲は本編用であって、アンコールに弾かないですよね)。

 『篤姫』のテーマは、井上道義氏指揮による演奏がテレビで使われているので、各会場で演奏しては「大受け」しているとのこと。
 客席には原田智子さんと一高で同窓生だったという達増岩手県知事の姿もあった。コンサート後、盛岡の音楽仲間たちと原田智子さんを囲んで打ち上げをひらいた。愉快な裏話をうかがうことができた。

◆このごろの斎藤純

○昨年の4月から編集長をつとめている月刊誌『街もりおか』は維持会員店からの会費でなりたっている。この不況下に、「盛岡の文化をたやしてはならない」と新たな会員も少しずつ増えている。ありがたいと思うとともに尊敬の念を覚えずにはいられない。編集長の役目として、これからも内容の充実に努めていきたい。
○今年は雪が少なくて過ごしやすい。とはいえ、もう冬には飽きてきた。言ってもしようがないことだが、早く春になってほしい。ツーリングやサイクリングができないと肉体的にも精神的にも不調をきたすからだ。

信長公ご所望の南蛮音楽『王のパヴァーヌ』を聴きながら