トップ > 目と耳のライディング > バックナンバーインデックス > 2009 > 第213回



◆第213回 アンバーホール開館10周年記念(7.December.2009)

水戸室内管弦楽団 久慈公演
指揮:小澤征爾
2009年11月29日(日)午後1時開演
久慈市文化会館(アンバーホール)大ホール

第一部
〈1〉ハイドン:協奏交響曲 変ロ長調 作品84 Hob.I-105
        オーボエ:吉井瑞穂
        ファゴット:ダーグ・イェンセン
        ヴァイオリン:川崎洋介
        チェロ:原田禎夫
〈2〉モーツァルト:ホルン協奏曲 第3番 変ホ長調 K.447
          ホルン:ラデク・バボラーク
 
第二部
〈3〉モーツァルト:交響曲 第39番 変ホ長調 K.543


 水戸室内管弦楽団を初めて生で聴いた。しかも、指揮は同楽団の音楽顧問をつとめている小澤征爾。最高のメンバーによる室内オーケストラのコンサートなのだから、当然といえば当然なのだが、ただもう呆気にとられるほどレベルの高いコンサートだった。
 
 ハイドンは今年没後200年にあたっていて、ずいぶん聴く機会が増えた。CDや関連著書もたくさん出た。私にとって今年はハイドンの凄さを知った年だった。
 実はハイドンの交響曲も弦楽四重奏曲も、これまでは「古くさい」と思って、さほど熱心に聴いてこなかった。ところが、聴けば聴くほどハイドンが時代を先どりした作曲家だったことがわかっていった(と同時に、己の不明を大いに恥じた)。日本では(あるいは世界では)モーツァルトのほうが圧倒的に人気があると思うが、私はハイドンにより親密なものを感じる。
 たとえば、この日演奏された〈1〉のチェロ独奏は、相当なヴィルトゥオージティが要求される。ハイドンはほかの交響曲でも、チェロに重要な独奏パートを与えているから、チェロを好きだったのかもしれない。
 協奏交響曲というのはあまり馴染みがないが、ハイドンがイギリスで活躍していたころに流行していたのだという。
 
 〈2〉では、素晴らしい歌心のホルンを聴くことができた。ホルンは音程が難しい楽器で、プロのコンサートでも怪しい音を聴くことが決して珍しくない。 ラデク・バボラークの独奏によって、私はホルンを安心して聴くということを初めて体験した。

 第2部では、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが入れ代わった。これは水戸室内管弦楽団のお家芸なのだそうだ。ついでに記しておくと、水戸室内管弦楽団のメンバーはみんな別のオーケストラでは首席をつとめているような人ばかりだ。
 1788年の夏、32歳のモーツァルトはわずか一カ月半のあいだに交響曲第39番、40番、41番を書いた。後に〈後期3大交響曲〉と呼ばれることになる。その3年後に35歳で亡くなってしまうからだ。したがって、モーツァルト晩年の傑作ということにもなる。
 大袈裟かもしれないが、この傑作を水戸室内管弦楽団の名手たちの演奏で聴けたことを、私はこの世を去るまで語り継いでいきたいと思う。

 会場に寺崎巌さんがいらしていた。寺崎さんは「サイトウ・キネンオーケストラに雰囲気が似ていますね」と話していた。
 終演後、寺崎さんに連れられて楽屋へお邪魔した。都響の篠原智子さん、ケルン放送交響楽団に入団の決まった村上淳一郎さん、そのケルン放送交響楽団で首席コントラバス奏者をつとめる河原泰則さんら客演者とお会いすることができた。篠原さんと村上さんは小澤征爾&ムスティラフ・ロストロポーヴィチ・コンサートキャラバンのメンバーとして岩手県内各地をまわった経験があり、岩手とは縁が深い。こういう人たちが世界の第一線で活躍していることを嬉しく思う。

◆このごろの斎藤純

〇私がギターで参加しているホットクラブオブ盛岡四重奏団のライヴがあります。なかなか生で聴く機会のない、フランス生まれのジャズ「マヌーシュスィング」をぜひ聴きにいらしてください。
12月22日午後8時から。桜山神社前のカフェNi-juにて。料金はワンドリンク付1500円。

エドゥアルド・ファルーのフォルクローレ・ギターを聴きながら