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◆第222回 春を告げる弦楽四重奏の響き(19.April.2010)

 昨年、岩手町立石神の丘美術館ギャラリーホールのコンサートでデビューしたラトゥール・カルテット(第202回参照 )が盛岡で初めてのコンサートを行なった。

2010年4月16日(金) 午後6時30分開演
もりおか啄木・賢治青春館2階展示ホール


【曲目】
-第1部-
[1]ハイドン:弦楽四重奏曲第74番 ト短調「騎士」Op.74-3
[2]長谷川恭一:弦楽四重奏のための「4つの童話」〜賢治童話集より
  I.銀河鉄道の夜
  II.グスコーブドリの伝記
  III.シチリアーノ(いてふの実)
IV.鹿踊りのはじまり
-第2部-
[3]ベートーヴェン:弦楽四重奏第4番 ハ短調Op.18-4

 
 弦楽四重奏を専門に演奏するグループ(弦楽四重奏団)は、そう多くない。ヴァイオリン2人、ヴィオラ、チェロ、それぞれの腕達者が常に4人一緒に活動しなければならないからだ。これはプロでもアマでも事情は同じと言っていい。たいていの場合は弦楽四重奏の作品を演奏するときにだけ4人集まる(したがって、いつも同じ顔ぶれが揃うわけではない)。
 けれども、弦楽四重奏は演奏家が4人揃えばいいというものではない。
 4人の名人が1回きりの演奏のためだけに集まる場合よりも、たとえ一人ひとりの名は売れてなくても、固定したメンバー4人による演奏のほうが質が高いことが珍しくない。
 弦楽四重奏という音楽が持つ特性として、一人ひとりの名人芸もさることながら、アンサンブルが重要だからだ。さらに、技巧面ではもちろんのこと、しばしば精神面でのつながりが演奏の善し悪しを決定するという恐ろしい性質も持っている。
 弦楽四重奏が精神性の高い音楽と呼ばれるのは、そういう理由からだ。

 ラトゥール・カルテットは、それぞれ個々の活動をしながらも、固定した4人のメンバーでグループを組んでいる。充分なテクニックを持っている4人が、昨年の結成以来、定期的に練習を行ない、研鑽を積み重ねてきた。今回、およそ10カ月ぶりにその演奏を聴いて、驚いた。偉そうなことを言うようだが、ラトゥール・カルテットは着実に成長している。

 三浦祥子さんのチェロは弦楽四重奏の柱となっているばかりでなく、その包容力でもって全体を包みこんでいて実に頼もしい。また、ハイドンはチェロにヴィルトゥオージティ(名人芸)を要求した作曲家で、交響曲でもチェロをずいぶんフューチャーしているし、この曲でもやはりチェロに大活躍をさせている。
 ラトゥール・カルテットを安心して聴けるのは、馬場雅美さんのセカンド・ヴァイオリンと熊谷啓幸さんのヴィオラのレベルがかなり高いからだ。スポーツカーやオートバイでいうなら、サスペンションとフレームがいいマシンのようなものだ。ハイパワーエンジンのほうにばかり目がつい行ってしまいがちだが、足まわりがしっかりしていないとV型12気筒だろうと何だろうと役に立ちはしない。 そして、この日は山口あういさんのファースト・ヴァイオリンの妙技を随所で聴くことができた。ことに[1]の疾走感には、ぞくぞくさせられた。奔放でいながら、ちゃんと抑制が効いている。まるでヨットレースを見ているような感じがした。
 ちなみに、ハイドンの『騎士』は、その疾走感が「馬を駆る騎士」をイメージさせたことから後世の人が付けた題だ。
 [3]は[1]の延長線上にある曲だから、まあ、お手の物と言っていいだろう。いつの日か、ベートーヴェンの最高傑作である後期弦楽四重奏に挑戦してもらいたい。

 [2]は作曲者の長谷川恭一さんご自身による解説付きだったので、曲のバックボーンを知ることができた。例によって長谷川ワールドをたっぷりと味わわせてくれた。会場のもりおか啄木・賢治青春館に相応しい作品だった。

 なお、ラトゥール・カルテットは6月12日に岩手町立石神の丘美術館で、デビュー一周年を記念するコンサートを行なう。[2]も演奏していただく予定なので、聴きのがした方はぜひこの機会にお越しいただきたい。

◆このごろの斎藤純

○私がギターを担当しているジプシースィング(フランス生まれのジプシージャズ)バンド「ホットクラブオブ盛岡四重奏団」のライヴのお知らせです。

 私たちホットクラブオブ盛岡四重奏団が月一回ライヴを行なっているクロスロードが一周年を迎えるのを記念して、5月8日にホテル・ブライトイン盛岡でライヴ・パーティをひらきます。 出演はホットクラブオブ盛岡四重奏団、ゲストとして東京からジプシーバイオリニスト古館由佳子さん、ミュゼットもこなすアコーディオン奏者平賀康子さんをお迎えします。 ジプシーバイオリンといえばロビー・ラカトシュの超絶技巧を連想します。あのブームのとき、クラシック音楽と思っていた音楽が実はジプシー音楽だったと気づかされました。サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」がそうですしブラームスの「ハンガリー舞曲第5番」などもジプシー音楽から旋律を採った楽曲です。また、ロシア民謡として有名な「黒い瞳」もジプシー音楽です。いずれも日本人好みの旋律ですね。 しかし、目の前で本物をご覧になった方はきわめて少ないと思いますので、今回は絶好の機会になるでしょう。古館由佳子さんは、2004年ハンガリーでのジプシーバイオリンコンテストで審査員特別賞ほか三賞を受賞しています。 会場は「ホテルブライトイン盛岡」(中ノ橋のたもとで「プラザおでって」の横)の2Fホールです。 料金は料理、ワンドリンク付きで前売り5500円当日6000円です。料理・ドリンクはホテルの斜め向かいにあるワイン・バー「アッカトーネ」さんから提供していただきますので、こちらもご堪能ください。



ラヴ・シーンズ/ダイナア・クラールを聴きながら