岩手県立美術館で開催中(5月16日まで)の「生誕150年記念『アルフォンス・ミュシャ展』」は、連日、たくさんの来館者で賑わっている。改めてその人気ぶりがうかがえる。
日本では過去に何度も大きな展覧会が開催されており、岩手県でも1985年に『アール・ヌーヴォの華 アルフォンス・ミュシャ展』が開催され、人気を博した。
ミュシャは現在のチェコ共和国(当時はオーストリア帝国)で1860年に生まれた。チェコ語ではムハと読むのが正しいそうだが、一般的にはフランス語読みのミュシャで通っている。ミュシャはまずポスター・デザイナーとしてフランスで成功を収めた。その名残だ。
ちなみに、作曲家のマーラーも同じ年に生まれている。
ミュシャのポスターは私などが見ると、あまりにロマンチック(乙女チックと言いたいところだが)すぎて、ちょっと照れくさく感じる。でも、女性に受けるのは大いに頷ける。ポスターはもちろん、デッサンはまるで少女漫画の世界だ。
これはもちろん順番が逆で、後世の少女漫画家がミュシャを参考にしたのだろう。だから、ミュシャに罪はないが、ミュシャといえば「少女漫画の世界」というイメージがある。 ところが、今回、私はこれまで知らなかったミュシャの別の一面と出会い、いささか衝撃を受けている。それは、ミュシャがアメリカでも成功をおさめた後、母国チェコに帰ってからの作品群である。
ニューヨークで、ボストン交響楽団(ずっと後に小沢征爾氏が第13代音楽監督に就任した)の演奏でスメタナの『わが祖国』を聴いたことがミュシャの民族意識を目覚めさせ、《スラヴ叙事詩》となって結実する。
当時、それらは「時代後れの作風」といわれ、あまり評価されなかった。その時代のムハ(ミュシャ)についてはこれから再評価されていくだろうという。
そんな知られざる(もちろん、私が知らなかっただけのことだが)ミュシャの姿に触れることができた。5月2日には仙台フィルのメンバーによる演奏で、ドボルザークの弦楽四重奏曲第12番『アメリカ』、スメタナの弦楽四重奏曲第1番『わが生涯より』のギャラリーコンサートがあった(無料)。メンバーは小川有紀子氏(ヴァイオリン)、小池まどか氏(ヴァイオリン)、御供和江氏(ヴィオラ)、北村健氏(チェロ)。
『アメリカ』は小池さんがファースト・ヴァイオリン、『わが生涯より』は小川さんがファースト・ヴァイオリンを担当。どちらの曲も主旋律がヴィオラではじまるんですね。これは珍しい。そして、昨日の演奏ではヴィオラ奏者がよかった。
『アメリカ』はドボルザークがアメリカで教鞭をとっていたころの作品だ。アメリカで耳にしたワークソングか何かを下敷きにしているそうだが、充分にスラヴ的でもある。交響曲並みの内容を持つスメタナも一緒に聴けて、とてもいいコンサートだった。
|