2010年6月24日午後6時30分開演
岩手県民会館大ホール
チケットが完売したコンサートは久しぶりだと思う。満員の大ホールは気持ちがいいものだ(私のまわりの席でも「こんなに入るのは珍しい」との声しきり)。
しかし、どうやら誤解もあったらしい。ベルリン・フィルと勘違いをしていらした方が少なくなかった(中にはベルリン・フィルを聴いたと思い込んだままお帰りになった方もいらしたという)。
確かにまぎらわしい。
ベルリン・フィル(ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団)は、Berliner Philharmoniker。ベルリン交響楽団はBerliner Symphoniker。
しかも、東西ベルリン時代にはふたつのベルリン交響楽団があったというから、ややこしい。
それはともかく、指揮者のリオール・シャンバダールは今回いくつかのコンサートをキャンセルし、代わりの指揮者が振ったが、岩手ではちゃんとシャンバダールを聴くことができた。
共演したピアノのアンドリュー・フォン・オーエンは190センチ以上ありそうなイケメンで、ピアニストというよりサッカー選手のような雰囲気。アメリカ出身の若手実力者だ。今回の来日公演ではオーケストラとずれたりしたそうだが、この日はそんなことはなく、ダイナミックかつロマンチックないい演奏だった。アンコールにはドヴュッシーの「月の光」を無難に弾いた。
オーケストラはベルリン・フィルとは対局にあるような渋い響きで、管楽器と弦楽器がひじょうにうまく溶け合っていた。ベートーヴェンの交響曲第5番で金管楽器、木管楽器、弦楽器とバトンタッチされるフレーズでは、それぞれが切れ目なく連なって何かマジックのようにさえ感じた。
アンコールはブラームスのハンガリー舞曲5番、6番、ビゼーのアルルの女から「ファランドール」、エルガーのエニグマ変奏曲から第9変奏「ニムロッド」。 それまでの渋い響きとはうってかわって、明るい音色で溌剌とした演奏が聴けた。
アンコール曲はシャンバタールが日本語で紹介し、最後は鳴りやまぬ拍手を制して「おやすみなさい」とステージを去った。
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