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◆ 第268回  文化支援 〜いわてフィルの取り組み (2.April.2012)

いわてフィルハーモニーwith川畠成道
チャリティコンサート2012
2012年3月16日(金)午後7時開演
岩手県民会館大ホール

 震災後、中止となったクラシック・コンサートは100にのぼるという。自粛、コンサートホールが地震の被害を受けたため、原発事故の風評による来日公演の中止など事情はさまざまだ。「音楽どころではない」と、音楽家が踏みとどまった例もある。

 そういう中で、いわてフィルハーモニー・オーケストラ(通称いわてフィル)が結成され、被災地で活動を続けてきた。地元の音楽家によるオーケストラで、いわば「文化の地産地消」を地で行く団体といっていい。
 いわてフィルを主宰する指揮者の寺崎巌さんは、津波で甚大な被害を受けた宮古出身だ(ご家族は幸い無事だった)。ともすると「押しつけ」となる危険性がないでもない「音楽による支援活動」を寺崎さん率いるいわてフィルが成功させてきたのは、真の意味で被災者と寄り添った活動をしてきたからだろう。

 「いわてフィルハーモニーwith川畠成道」を聴いてきた。メンバーの思いがひとつになった、いいコンサートだった。 川畠さんの演奏も素晴らしかったが、エルガーの『威風堂々』のあの有名なメロディが鳴りだしたとき、込み上げてくる嗚咽を止めることができなかった。
 これには私自身、戸惑った。「ああ、俺は心が弱っていたんだな」と気づかされた。
 涙を流したら、何だかスッキリした。

【プログラム】
1.メンデルスゾーン:序曲ハ長調
2.モーツァルト:ディベルティメント K.138
3.メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲
4.エルガー:威風堂々
5.富田勲:「新日本紀行」のテーマ
アンコール:G線上のアリア(川畠成道さんと共演)

 盛りだくさんのプログラムだったが、逆に散漫になってしまった。2はカットしてもよかったと思う。 

 この日の募金は422,993円にもなった。出演者からのご厚志30,000円を加算した452,993円が、この事業を主催するなど、被災地での文化支援活動を行っている「いわて文化支援ネットワーク」に寄付されたことを記しておく。

いわてフィルは、学校に芸術家を派遣する文科省の復興教育事業の一環も担っている。
大津波で私たちは多くを失ったが、いわてフィルのように新しく生まれたものもある。大切にしていきたい。

◆このごろの斎藤純

〇新年度になった。今年度は自分の時間をつくることを第一の目標に、あまり忙しくならないように過ごしたいと思う。

エルガー:威風堂々を聴きながら