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◆第110回 おそるべし! バディヌリ(14.november.2005)

弦楽合奏団バディヌリ 第9回定期演奏会
2005年10月29日 盛岡市民文化ホール大ホール

[第1部]
[1] R.ヴォーン・ウィリアムズ:コンチェルト・グロッソより
              イントラーダI
[2] A.ヴィヴァルディ:調和の霊感 Op.3-11
              2つのヴァイオリンとチェロのための協奏曲
[3] モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジーク K.525

[第2部]
[4] ブリッジ:アイリッシュメロディ「ロンドンデリーの歌」
[5] マーラー:交響曲5番より アダージェット
[6] ホルスト:ムーア風組曲

[アンコール]
福島弘和(寺崎巌編曲):「じんじん」沖縄わらべ歌より
グリーグ:組曲「ホルベアの時代より」 プレリュード
モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジークより 終楽章

 [5]を楽しみに、聴きに行った。
 が、これは後回しにして、まず[2]と[3]について激賞したい。この2曲はどちらもサラッと演奏すれば、耳に心地いいイージーリスニングになる。プロの演奏でも、そういうのが少なくない。もちろん、バディヌリもそうやろうと思えば、そうできる。だが、バディヌリはこの2曲に深く取り組み、とんでもない力演で聴かせた。
 [2]を聴きながら私は一瞬、「こんな名曲をヴィヴァルディが書いたのか」と驚いた(ヴィヴァルディさん、ごめんなさい)。
 さらに、[3]はバディヌリがひとつの頂点を示した名演だったと言っていい。こんなに彫りの深い、ロマンチックな演奏はめったに聴けない(近年はこういう濃厚な演奏を避ける傾向のせいもあるが)。
 というわけで、もう前半だけで私は満足した。足を運んだ甲斐があった。

 [4]はバディヌリが得意とする英国弦楽合奏曲だ([1]と[6]もそうだ)。初めて聴く曲なのに、なぜかそういう感じがしない。バディヌリがこういう隠れた名曲を見つけて紹介してくれることに、私はいつも感謝の気持ちを覚える。世の中にはCDにもなっていない名曲がたくさんあるのだ。

 さて、[5]である。
 実は随所でハラハラさせられたし、緩んだと思える箇所もあった(後から聞いたところによると、やはりミスが数カ所あったとのことだった)。けれども、私は感銘を受けた。
 この曲はロマンチックな旋律がゆらゆらと大きく流れる曲なのだが、耳に聴こえてくるよりも楽譜は複雑精緻で、演奏はきわめて難しい。
 バディヌリは指揮者のいない合奏団だ。演奏を互いに聴きあって音楽を構築していくわけで、方法論としては弦楽四重奏団と同じだが、メンバーは30名近いから容易にはいかない。
 マーラーのこの曲も指揮者がいれば、あるいはもっといい演奏になったかもしれない。でも、私はこの挑戦にまず拍手を送る。そのうえで、2年後か3年後にもう一度この曲を取り上げてもらいたいとリクエストをしておきたい。そのときは、きっと[3]のような名演を聴かせてくれるに違いない。

 また、[2]でそれぞれの持ち味を発揮したヴァイオリニストの山口あういさんと米倉久美さん、この曲のほか随所で重要な役割を果たしたチェリストの泉山信兒さんの名を特に記しても異を唱えられることはあるまい。

 来年、バディヌリ定期公演は10回の節目を迎える。その前段として、この弦楽合奏団の底力を発揮したコンサートだった。何よりもバディヌリらしい音楽をつくろうという意気込み(これは、自己流に好き勝手にやろうというのとはまったく意味が違う)がしっかりと伝わってきた。いいコンサートだった。

◆このごろの斎藤純

〇盛岡文士劇『鞍馬天狗』では、立ち回り(殺陣)がある。こんなに動きの激しい文士劇は初めてではないだろうか。覚えるのもなかなか大変だ。
〇私が所属する田園室内合奏団も出演するコンサートがあります。入場料500円です。お誘いあわせのうえ、お越しください。

[田園ハーモニーコンサート2005]
2005年11月27日(日)14:00開演
矢巾町 田園ホール

ヘンデル:メサイヤから「ハレルヤ」など

指揮 寺崎 巖
客演コンサートマスター 長谷部雅子(東京ゾリステン)
ソプラノ 村松玲子(不来方高校)、 テノール、佐々木朋也(不来方高校)
合唱指揮 阿部智則(不来方高校)

田園室内合奏団 弦楽合奏団バディヌリ
田園ホール混声合唱団 コールパープル 矢巾コール 矢巾中学校 矢巾北中学校
コールM コール・ネネム 不来方高校音楽部ほか (予定)

マイルズ・デイヴィス・クインテット1965-68を聴きながら