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●コンサートや展覧会の感想をここに記しています。
私は音楽も美術も専門的な教育を受けたことはありません。ただ好きで観たり聴いたりしているだけです。だから、評論の場ではないことをお断りしておきます。
地元の方の芸術に触れるとき、私は「北東北のモダニズム」ということを意識しています。この場もその探求のひとつと受け取っていただければ嬉しいです。トンチンカンなことが書いてあっても、大目に見 許してください。
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◆第396回  岩手ゆかりの演奏家たちの饗宴(24.Jul.2017)

 NASCH(ナッシュ)室内合奏団の第三回演奏会に行ってきた(盛岡市民文化ホール小ホール、7月21日午後7時開演)。この演奏会は「岩手にゆかりのアーティストたちによる」と謳っているとおり、岩手の弦楽指導の中心的存在である渡辺めぐみさんをはじめとする岩手出身の演奏家、そして剣持清之さん(チェンバロ)のように岩手在住の演奏家が参加している。また、山口奏さん(チェロ)のように音楽大学で勉強中の方もいる。なお、ナッシュの名前の由来となっているナッシュマルクトはウイーンで最も歴史のある食品市場で、周辺にはグルメ垂涎のレストランやカフェが集まっている名所だ。
 では、今回のメンバーを紹介しよう。
ヴァイオリン:田口雅人、渡辺めぐみ、米倉久美、齋藤佐織、齋藤純子、田口史織
ヴィオラ:柳澤崇史、青田知子
チェロ:松本恒瑛、山口奏
チェンバロ:剣持清之
 プログラムは下記の通り。
【第1部】
〈1〉パッヘルベル:カノン
〈2〉ヘンデル:合奏協奏曲 ト短調Op.6-6
【第2部】
〈3〉メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲 変ホ長調Op.20
〈4〉メンデルスゾーン:弦楽のためのシンフォニア第10番 ロ短調
 第1部はバロック、第2部はメンデルスゾーンの作品という組み合わせだ。
 メンデルスゾーンは、当時もはや忘れ去られていたバッハの『マタイ受難曲』を演奏し、バッハ再興のきっかけをつくった。同様にヘンデルについても、オラトリオ『エジプトのイスラエル人』を復活させ、ヘンデルの再評価につながっていった(ちなみに、メンデルスゾーンはユダヤ系である。そのためヒトラー政権時代は演奏を禁じられた)。そういう意味でもよく考えられた選曲だといっていいだろう。しかも、どの曲も聴き応えがあり、久々に充足感が得られた。こういう演奏会なら毎月でも聴きたいくらいだ。
 弦楽八重奏は、ヴァイオリン4本、ヴィオラ2本、チェロ2本という編成なので、たいていの場合、二つの弦楽四重奏団が組んで演奏する。演奏会のために弦楽四重奏団を二つ用意するのはけっこう大変だから、実演を聴く機会も少ない。私は室内楽を聴くようになって20年になるが、実演は今回で3度目だ。
 クラシックのレパートリーの中では数が少ない弦楽八重奏曲だが、後の世代のエネスクの作品などいずれも名曲である。ことにメンデルスゾーンの作品は、16歳の少年が書いたものとは思えないほど完成度が高い。メンデルスゾーンの天才ぶりがわかろうというものだ。
 ナッシュ室内合奏団は、緩急の按配が巧みで、内声部の動きがよくわかる演奏で楽しませてくれた。これは全体を通しても言えるのだが、第1ヴァイオリンがリードしてひっぱるというよりも、第2ヴァイオリン以下のしっかりした土台の上で第1ヴァイオリンが自由に羽ばたいているという印象を受けた。私は室内楽の鍵を握っているのは第2ヴァイオリンではないかと考えているから、それが裏付けられた。
 メンデルスゾーンは弦楽のための交響曲(シンフォニア)を13曲残していて、いずれも名曲揃いなのだが、これもなかなか実演に接する機会がない(CDもあまり録音されていない)。第1部で演奏されたヘンデルのト短調の合奏協奏曲と相まって、この日の演奏会の白眉となった。
 岩手からも続々と演奏家が育っていることが、この演奏会からも窺い知ることができた。ちなみに、チェロの山口奏さんは、2013年に小沢征爾氏が主宰する『小澤国際室内楽アカデミー奥志賀』に招待されて、世界の弦楽器奏者たちが切磋琢磨する現場を見学している。今後がますます楽しみだ。
〈このごろの斎藤純〉
〇隣県の秋田で豪雨による水害が出ている。心からお見舞い申し上げます。盛岡も大雨が降り、北上川ゴムボート川下り大会が中止になった。九州北部記録的豪雨が脳裏をよぎり、ヒヤヒヤしたが、大きな被害はなかったようで何よりだった。
○このところ朝晩は過ごしやすくなり、睡眠も充分にとれるようになった。その効果は絶大で、先送りしてきた雑用(オートバイとロードバイクの洗車、ギターの弦の交換など)をいっきに片づけた。
ジミー・スミス:ルート・ダウンを聴きながら


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