◆第123回 ギターを聴く その9(15.may.2006)
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Presents 2006 Spring Concert
岩永善信10弦クラシックギター・リサイタル 2006年4月30日
プラザおでってホール |
珍しい10弦ギターの演奏会があった。
ちょっとだけ10弦ギターについて説明しておきますね。フォークギターに12弦のがありますが、あれとはまったく違うものです。つまり、12弦フォークギターは2本1組で扱う復弦6コースといって、基本的に6弦ギターと同じ。
岩永さんが弾かれる10弦クラシックギターは、低音の弦が4本多い。これによって音域が増えるだけでなく、共鳴(試しにチューニングの合っているギターの1弦を弾いてみてください。6弦が共鳴するのがわかります)による豊かな響きが得られる。
ギターは「小さなオーケストラ」といわれるが、音も小さいというウィークポイントもある。これを克服するためにナルシソ・イエペスが考案した(10弦ギターを考案したイエペスが好きで、グラモフォンの20枚組ボックスセットを愛聴している)。
したがって、我々が聴き慣れている6弦のクラシックギターよりも後に登場したわけだが、その響きはリュートやテオルボ(いずれも共鳴用の弦をたくさん持った古楽器)を想わせる。
一時期、荘村清志さんが10弦ギターを弾いていたが、今は6弦ギターに戻られた。10弦ギター演奏会はひじょうに珍しい。
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曲目は以下のとおり。
〈第1部〉
[1]G・サンス:スペイン組曲1.エスパニョレッタ 2.パッサカリア 3.ルヘーロとパラデタス 4.フォリアス 5.パパーナ 6.カナリオス
[2]D.スカルラッティ:ソナタ イ長調 L.203
[3] 同 :ソナタ ニ長調 L.418
[4]R.サインス・デ・ラ・マーサ:ペテネーラ
[5] 同 :ロンデーニャ
〈第2部〉
[6]トラッド:さくら幻想曲
[7]A.ピアソラ:天使の死
[8]E.グラナドス:エピローグ〜祭りのこだま〜ゴヤの美女(マハ)〜物乞う人〜スペイン舞曲第6番
〈アンコール〉
ベートーヴェン:ピアノソナタ 第18番からメヌエット
プジョール:くまん蜂
トラッド:アメインジング・グレース |
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簡単に作曲家について(知っている範囲で)触れておく。
サンスはバロック期のギター(現在のギターとは楽器の大きさも弦の数も違う)名手で、教則本も残している。スカルラッティもバロック期の作曲家だが、ギターのための曲は書いていない。演奏曲目はチェンバロ・ソナタを10弦ギター用に編曲したもの。グラナドスは第62回にも書いたようにギター曲を書いていない。ピアノ曲をギター用に編曲したものが「クラシック」(スタンダード・ナンバー)となっている。
レヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサは『アランフェス協奏曲』で知られるロドリーゴに教えを受けた名ギタリストだ。
印象に残った曲について簡単に記します。
『さくら幻想曲』は日本古謡の『さくら』を編曲した作品。この曲のギター編曲版はいくつかあって、琴を想わせる表現が基調となっている。それに対して、岩永さんの『さくら幻想曲』はあくまでもギターの音楽であることを貫いていた。
最も聴き応えのあったのはタンゴの(というよりも、現代音楽の) 巨匠アストル・ピアソラの『天使の死』だった。白熱の演奏とは、ああいうのを言うのだろう。岩永さんのテクニックとモダンな感性がフルに発揮され、この演奏を聴けただけで行ってよかったと思った。
『ゴヤの美女』はいささかメカニカルな演奏で、この曲の隠れた官能性が表現されていないのが残念だった。もっとも、岩永さんはそんなことは百も承知で、抒情に流されるのを嫌ったのかもしれない。
ほとんどの曲ごとに(ということは、キーによって)チューニングを(主に6弦以下の低音弦)変えていたことも印象に残っている。
おでってホールは残響がないので、弦楽器奏者には気の毒だ。薄くPAでもってリバーブをかけるという手もあるが(遠くからチラッと見ただけなので確実ではないが、岩永さんのギターはマイクを内蔵しているようだ)、岩永さんはテクニックでもってホールの問題を克服した。
ギターが小さなオーケストラであることを実感させてくれる名演奏であり、10弦ギター独特の響きを存分に味わわせてくれた。弱音から強音までのダイナミックレンジの広さにはまったく驚かされた。
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◆このごろの斎藤純
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〇振り返ってみると、今年は花粉症であまり苦しまなかった。もちろん、薬は飲みつづけていたが、テン茶を飲んでいたこと、ヨーグルトを毎日欠かさなかったことが功を奏しているような気がする。 |
マノロ・サンルーカルを聴きながら
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