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◆ 第271回 重低音楽器の底力 (14.May.2012) |
2010年秋に、チェロの植木昭雄さんと組んだデュオで、私たち弦楽器ファンに至福の時間を与えてくれたコントラバスの黒木岩寿さんが、今度は岩手出身のピアニスト森知英さんと組んでコンサートを開いた(岩手県公会堂にて5月6日午後2時30分開演)。 会場は岩手県公会堂21号室。前回のもりおか啄木・賢治記念館も響きのいい部屋として知られているが、実はここも知る人ぞ知る「響きのいい部屋」だ。やはり、昔のレンガ造りの建物は基本的に西洋建築とほぼ同じなのでクラシックの演奏に向いている。 『鎮魂 そして夢』と題したコンサートのプログラムは下記のとおり。 |
バッハ/G線上のアリア モーツァルト/デュポールの主題による9つの変奏曲(デュポールのメヌエットによる〜と記載する場合もある) シューベルト/アルペジョーネ・ソナタ ショパン/バラード第1番 ト短調 作品23 ブロッホ/祈り ボッテシーニ/夢 同 /『夢遊病の女』によるテーマとヴァリエーション (アンコール)チャルダッシュ、アストル・ピアソラ/アヴェ・マリア |
『鎮魂 そして夢』は言うまでもなく東日本大震災を踏まえたテーマだ。鎮魂と夢を伝えるのに、音楽ほどふさわしいものはあるまい。そして、その思いが充分に伝わってくるコンサートでもあった。
中でもブロッホは東洋的な音階が頻繁にあらわれることもあって、響きが親密に感じられ、鎮魂の思いがストレートに伝わってくるようだった。また、森さんのショパンが迫真の演奏だった。私はここしばらくショパンから遠ざかっていたが、改めて聴き直そうという気になった。 |
コントラバスは縁の下の力持ちという存在ながら誰もがよく知っている楽器だ。けれども、ソロを聴く機会は(ジャズの場合を除いて)ほとんどない。そもそもソロが可能なのかどうか、と疑問を持つ方がいても少しも不思議ではない。 |
黒木さんによる曲ごとの解説もわかりやすく(自ら企画した音楽とトークによる「文化人類楽講座」が好評を博している)、ことにボッテシーニのようにあまり知られていない作曲家の作品を聴く際には助けられる。 |
◆このごろの斎藤純 |
〇中津文彦氏の突然の訃報につづいて身内にも不幸があったため、ゴールデンウィークとは縁がなかった。そういう個人的な状況もあって、上記のコンサートが実に胸にしみた。 |
カエターノ・ヴェローゾ&マリア・ガドゥ を聴きながら |
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