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目と耳のライディングバックナンバー

◆第291回  橋本八百二展を観る(11.Mar.2013)

 橋本八百二(1903~1979)の生誕110年を記念して、盛岡市民文化ホール展示ホールで、『橋本八百二展』が開催されている(20日まで)。
 八百二は県議会議員をつとめたり、岩山中腹に橋本美術館をつくるなど画家の枠を超えた存在だった。県議会議員としての八百二は議長までつとめたし、八幡平や陸中海岸の国立公園化に尽力した。橋本美術館は自ら建設運動を推進していた県立美術館がなかなか実現しないのに業を煮やし、私費でつくったものだ。後に県立美術館ができ、橋本美術館は役割を終えたかのように閉館した。
 こういったことが知られている一方、八百二の画業についてはあまり知られていないような気がする。橋本美術館があったころは作品を観ることができたが、今はその機会もない。とても残念なことだ。
 本展では小学校2年のときの絵から絶筆となった「八甲田の新緑」まで油彩、水彩、デッサンなど45点に加えて、翁朝盛作のブロンズ像『橋本画伯像』と松村外次郎作の『橋本八百二像レリーフ』が展示されている。
 小学生時代の作品は八百二の早熟ぶりを伝えているし、戦前のモダンな感覚に満ちた作品も見応えがある。そして、八百二といえば岩手山だ。
「八百二はキャンバスを三つ四つ並べて同時に描いていた」という伝説があるが、それが事実だったことを示す作品も展示されている。ペインティングナイフの巧みな使い手であったことがわかる作品でもある。
 ちょっと前になるけれど、国立近代美術館で松本竣介、萬鉄五郎、橋本八百二が同時期に展示されていたことがある。同県出身の画家3人の作品が展示されるのは実に稀だ。私は我がことのように誇らしい気持ちを味わった。あのときの感激を思いだした。
〈このごろの斎藤純〉
〇やはり年度末のためか、毎日が慌ただしい。こういうときは絵を観ているあいだの短い時間が貴重だ。
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30番を聴きながら

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