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目と耳のライディングバックナンバー

◆第391回 シルバーパワー(最近のコンサートから)(15.May.2017)


 サンタナ来日公演(4月23日/盛岡市民文化ホール大ホール)、日野皓正クインテット・ライブ(4月27日/盛岡すぺいん倶楽部)、山下達郎岩手公演(5月7日/岩手県民会館大ホール)と短期間に大きな「聴きもの」が続いた。すぐにわかると思うが、共通点がある。サンタナを率いるカルロス・サンタナは1947年7月20日生まれだからコンサートの時点では69歳、日野皓正は1942年10月25日生まれで74歳、山下達郎は1953年2月4日生まれの64歳。いわゆるシルバー世代の現役ミュージシャンである。
 ミュージシャンもシルバーなら、オーディエンスも当然ながらシルバーだ。上記3公演のオーディエンスは圧倒的に50代から60代の世代が多かった。
 ところで、もうひとつの共通点を紹介したい。日野皓正ライブには小学生が父親と一緒に来ていた。吹奏楽部でトロンボーンを担当しているそうだが、この日はカウベルを渡されて、一所懸命にリズムをキープしていた。ちなみに、日野皓正クインテットのドラムス石若駿は12歳で日野皓正と共演し、その後、東京芸大付属高校、東京芸大と進んだ逸材だ。
 山下達郎コンサートではお孫さん連れの姿が何組か見られた。公演中に泣きだした子がいたが、山下達郎はまったく意に介さなかった。だいぶ前に聴いたコンサートで、やはり子どもが泣きだしたことがあり、「まわりのお客さんのほうが気を使うでしょうけれど、ぼくは大丈夫。その程度のことでぼくの音楽は壊れない」と言って盛大な拍手を受けたことを思いだした。
 要するに、ヒノテルと山下達郎の客席には3世代がそろっていた。もしかすると、サンタナの客席もそうだったかもしれないが、私は気づかなかった。
 山下達郎は60歳が目前に迫っていたころからライブ中心の活動に方向転換し、今に至っている。コンサートは常に3時間を超える。休憩時間は取らない。実にハードなコンサートを毎年こなしているわけだ。しばしば「若いころよりも喉の調子がいい。体調もいいので、歌えるかぎり、歌い続けていく」と言う。同時に「年齢を考えると、歌えなくなる日が確実に来るのだから、今やれることは今のうちにやっておく」とも。
 質の高いライブもさることながら、そういう姿勢が我々ファンを魅了してやまない。
 サンタナも素晴らしかった。およそ2時間にわたって、ほとんどMCもなく次から次へと怒濤のラテンロック(サンタナがデビューしたころは、そういうふうに呼ばれていた)を繰り広げる。サンタナの呪術的というか悪魔的というか、デビュー当時と変わらぬ官能的なギタープレイに圧倒された。これまでのヒット曲をどんどんやってくれるので、ただただ感激しどおしだった。私はサンタナを生で聴くのは3度目だが、この日の演奏が一番よかったと思う。
 今年はジェフ・ベックも盛岡に来ているが、サンタナの盛岡公演も招聘元のウドー音楽事務所に盛岡出身の「やり手」スタッフがいるからだと噂に聴いた。ありがたいことだ。
 印象的だったのは、一階のステージよりの客席がしょぱなから総立ちになったことだ。オーディエンスの平均年齢が高いのに珍しい光景だった。
 ちなみに、山下達郎コンサートはアンコールまで坐って聴く。今年は後半から総立ちになった。これも特筆しておきたい。
〈このごろの斎藤純〉
〇黄金連休中に低山歩きを満喫した。スキー場もそうだが、市内から1時間足らずのところにとてもいい山がいくつもある。それでいながら、サンタナも山下達郎も聴くことができる。盛岡は本当にいいところだと思う。
山下達郎:OPUSを聴きながら