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◆ 第246回 小澤征爾氏からのメッセージ(11.April.2011)

 震災後、間もない3月14日、小沢征爾・ムスティラフ・ロストロポーヴィチコンサート・キャラバンを運営したNPO法人コンサート・キャラバン・イーハトーブ副代表の蒲沢茂さん(矢巾町在住)に小沢征爾氏からメッセージが届きました。

キャラバンを支えてくださった皆さまへ

私たちキャラバンを2回にわたって、美しいみちのくに温かく迎え、そして支えて下さった皆 さまを大きな災害が襲っています。
報道であまりにもひどい惨状を目にし言葉もありません。
衷心からのお見舞いを申し上げますとともに、
皆様と皆さまのご家族のご無事を心よりお祈りするばかりです。
                                   小澤征爾

 コンサート・キャラバンについては、バックナンバー(第31回第106回)をご覧ください。
 キャラバンで沿岸をまわったときのことで、今も鮮明に記憶しているできごとがあります。
 大槌でキャラバン一行を中学校の吹奏楽団が迎えてくれました。予定にはなかったことでしたが、オーケストラの面々が部員たちに指導をはじめたのです。
 トランペットの高音部をうまく出せない生徒がいました。
 指導にあたっていたトランペット奏者は、湾に浮かぶ島を指さしました。
「あの島まで音を届けるつもりで吹いてごらん」
 このアドバイスを受けて生徒がトランペットを吹くと、きれいな、よく通る音が出たのです。
 まわりを囲んでいた私たちは大きな拍手を送りました。
 吹奏楽部を指導している先生が飛んできました。
「○○くん、できたじゃない。どうやったの?!」
「ひょっこりひょうたん島に届くように吹きました」
○○くんは飄々と答えました。

  あれから6年が過ぎています。彼はどうしているでしょうか。あのときの島も、震災で大きな被害を受けました。
 当時はまだ音大の学生だった彼らを、沿岸の人々は暖かくサポートしてくれました。フルート奏者とバスーン奏者を受け入れてくださったご夫婦が残念ながら亡くなられたという知らせが、海を越えて小沢征爾氏のもとに届けられました。
 そして、二度目のメッセージを私たちは受け取りました。

キャラバンを支えてくださった皆さまへ。

 本日、宮古でホストファミリーを引き受けてくださった生内克明さんご夫妻が大津波に巻
き込まれ、残念ながら亡くなられたとの連絡を受けました。
 生内さんはご夫妻はキャラバンメンバーのフルート奏者(2名)とバスーン奏者(1名)を受
け入れてくださった方々です。
 生内さんご夫妻の無念を思いますと、言葉もございません。
 心よりご冥福をお祈りいたしますとともに、生内さんのご家族の皆さまに衷心よりお悔やみ を申し上げます。
 事態は決して楽観を許しませんが、皆さまと皆さまのご家族はもとより、この災害に遭われ た方々のご無事をお祈りいたしております。
 キャラバンメンバーともども、常に皆さまのことを思い、案じております。
                                       小澤征爾
 遅ればせながら、この場をお借りして私からもお悔やみを述べさせていただきます。

 過日、NHK衛星放送でアンドレ・プレヴィン指揮/NHK交響楽団アメリカ公演のもようが放送されました。
 テレビの画面に映し出されたN響メンバーには、コンサート・キャラバンに参加して、ホームステイしながら沿岸をまわったヴァイオリン奏者の姿もありました。N響は追悼の意味を込めて、バッハの「G線上のアリア」を演奏しました。きっと彼らは岩手の沿岸で出会った人々の顔を思いだしていたに違いありません。
 そして、第二ヴァイオリンには盛岡出身の鈴木弘一さんの姿もありました。震災直後に日本を後にした彼も、内心ではふるさとのことが心配だったことと思います。
 このときのN響のコンサートは、アメリカの人たちに大きな感動を与えたといいます。
 音楽は心をつなぐ。改めてそう感じました。