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◆第174回 子供たちに学ぶ現代美術(12.May.2008)

『美術館に行こう!
ディック・ブルーナに学ぶモダン・アートの楽しみ方』
岩手県立美術館 2008年4月19日[土]−5月18日[日]

  パリやニューヨークの美術館では、子供たちがグループで(学校のクラスごとかもしれない)美術館賞をしている場面によく出くわす。そこで驚くのは、子供たちが「いやいやながら、仕方なく来ている」という感じではないことだ。もっと小さいころから美術館には来ているらしく、マナーもちゃんとしている(もちろん、おしゃべりをして注意を受ける子供がいないわけではないが)。
 しかも、セザンヌやピカソを指さして、何やら議論めいたことをしているのだ。

 これと似たような光景を、岡本太郎美術館(川崎市)で目にしたことがある。子供たちが岡本太郎の作品を見て吹き出したり、首をかしげたり、大人以上に楽しんでいた。「自由に坐ってください」という椅子(もちろん、これも岡本太郎の作品だ)に積極的に坐ってみるのも大人ではなく、子供たちだった。

 大人はつい「自分たちにわからないものが、子供にわかるわけがない」と決めつけがちだ。それは子供たちの自由な発想や柔軟な感受性を否定していることにほかならない。
 展覧会ではむしろ子供から教わるという気持ちでいるべきだ(クラシックのコンサートでも同じことが言えると思う)。

 岩手県立美術館で開催中の『美術館に行こう! ディック・ブルーナに学ぶモダン・アートの楽しみ方』は、子供たちと美術館に足を運ぶ格好の機会だ。この企画展が素晴らしいのは、ディック・ブルーナのさまざまな領域に渡る仕事を一望できる楽しみもさることながら、ミッフィーを案内役に、萬鉄五郎や松本竣介など郷土の美術家をじょうずに紹介していることだ。
 したがって、一階で開催されている企画展を堪能したら、その勢いに乗じて二階の常設展もぜひご覧いただきたい。
 「つまらない」と決めつけて常設展に行こうとしないのは大人の無理解と身勝手であって、子供たちはミッフィーに接したのと同じような好奇心溢れる目で、それらを見るだろう。

◆このごろの斎藤純

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『イル・ポスティーノ』のサントラ盤を聴きながら