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◆第225回 水原良子さんの音楽世界に酔う (7.June.2010) |
水原良子音楽活動30周年記念コンサート |
【第1部】 |
[1]R・ヴォーン・ウィリアムズ:ヴィオラとピアノのためのロマンス |
[2]H・ヴュータン:ヴィオラとピアノのためのエレジー ヘ短調 Op.30 |
田山奏(ヴィオラ) |
水原良子(ピアノ) |
[3]A・ドヴォルザーク:ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ ト短調 Op.100 |
片桐薫(ヴァイオリン) |
水原良子(ピアノ) |
[4]F・モレーノ=トローバ:ギターとピアノのためのソナティナ |
[5]F・ソル(R・ディアンス編):ギターと弦楽四重奏のためのエチュード |
高田元太郎(ギター) |
片桐薫(第一ヴァイオリン) |
片桐資歩(第二ヴァイオリン) |
田山奏(ヴィオラ) |
石原博史(チェロ) |
[6]ガスパール・サンス:組曲 |
高田元太郎(ギター) |
【第2部】 |
[7]F・シューベルト:ピアノ五重奏曲 イ長調 D.667「ます」 |
水原良子(ピアノ) |
片桐薫(ヴァイオリン) |
田山奏(ヴィオラ) |
石原博史(チェロ) |
八木一弘(コントラバス) |
[アンコール]二橋潤一:「ギターとピアノのための哀歌」 |
水原良子(ピアノ) |
高田元太郎(ギター) |
プログラムから、すぐに気づくことがある。ピアニストの記念コンサートなのに、ピアノの独奏曲 がひとつも入っていない。水原さんのお人柄を反映していると思う。 プロのギタリストである高田元太郎さんが加わっているのも特徴的だ。ご存じの方も少なくないと思うが、水原良子さんはギター製作家の故水原洋さんの未亡人であり、高田さんは水原さんとお付き合いがあった。 当日のプログラムを開いて、もうひとつ気がついたことがある。共演している薫カルテットのメンバーもコントラバスの八木さんも岩手県外の出身なのだ。音楽が取り持つ縁の不思議を感じさせる。 [1]と[2]は珍しいヴィオラ曲。この日の演奏で、ヴィオラの魅力を知った方も多いのではないかと思う。[6]で高田さんは故水原洋 さんが製作した19世紀ギターに持ち替え、素晴らしい演奏を披露してくださった。19世紀ギターは現在のギターより小振りで、バロック音楽などに用いられる。 [7]は5月にふさわしい曲だ。ピアノ五重奏となっているが、通常のそれとは編成が異なる。ヴァイオリンが一本になり(通常の編成から第2ヴァイオリンが抜ける)、コントラバスが加わるのだ。シューベルトがどうしてこういう編成を採用したのか、私はよく知らない。 水原良子さんを中心とする五重奏団は実に清冽な響きでホールを満たした。こういう爽やかな演奏もそうあるものではない。 [アンコール]はとてもきれいな曲で、私はこの作曲家の名を初めて知った。 薫弦楽四重奏団を率いる片桐薫さんはさすがに手堅く、かつ柔らかな音色で全体をまとめていた。 高田元太郎さんは、ギターに触れていないときも身体中で音楽を奏でることができる希有な音楽家だ。その世界に酔わせてもらった。 冒頭にこのコンサートのプログラムについて、水原良子さんの人柄を反映していると記した。全体の演奏もまた水原良子さんの人柄そのままだったと思う。 高い集中力が切れることなく、優しく穏やかな中に、パキンッと折れてしまいそうな繊細さを秘めている。 |
◆このごろの斎藤純 |
○私がヴィオラで参加している田園フィルハーモニーオーケストラの第7回定期公演のお知らせです。 |
フィリップ・グラス:ヴァイオリン協奏曲を聴きながら |
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