◆ 第231回 ギターを聴く その11(6.September.2010) |
第3回水原洋記念演奏会〜ギタリスト高田元太郎の世界〜
2010年9月3日(金)午後7時開演
盛岡市民文化ホール(マリオス)
出演:高田元太郎(ギター)
賛助出演:水原良子(ピアノ)、山口あうい(ヴァイオリン)、河野智美(ギター)
司会:斎藤純
日本ギター界の鬼才・高田元太郎さんのコンサートがあった。これは、ギター製作家の故水原洋さんとゆかりの演奏家によるコンサートの第三弾である。
高田元太郎さんは水原さんがつくった19世紀ギターの愛用者だ。この日はソロの曲で、水原ギターのモダンギター(我々が見知っている一般的なギター)も使用した。
|
【プログラム】
|
1.無伴奏チェロ組曲第1番(バッハ〜高田編) ギター:高田元太郎
|
2.スペイン組曲(サンス〜高田編) 19世紀ギター:高田元太郎
|
3.リュート、ヴァイオリンと通奏低音のためのトリオ ト短調RV85(ヴィヴァルディ〜高田編)
|
ギター:高田元太郎、ヴァイオリン:山口あうい、ギター:河野智美
|
4.無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番(バッハ〜高田編) ギター:高田元太郎
|
5.悲しい歌、挽歌(二橋潤一) ギター:高田元太郎、ピアノ:水原良子
|
6.スペイン(チック・コリア〜高田編) ギター:高田元太郎、河野智美
|
出色のコンサートだった。おそらく、今年の白眉と断言していいだろう。私は高田元太郎さんのバッハの世界に魅了された。
もともとの曲はそれぞれチェロ、ヴァイオンのための曲なのだが、あたかもバッハがギターのためにつくった曲のように聴こえた。単なるギター用アレンジではない。バロック音楽とバッハの精髄を理解していないと、こうは聴こえまい。
現代作品も素晴らしかった。
私が水原さんと初めて会ったときに意気投合したのは、お互いにバロック音楽と現代音楽をよく聴いているという共通点があったからだ。もうひとつ付け加えると、いわゆるクラシック音楽(ベートーヴェン、ブラームス、シューマンなど)をあまり聴かないことも共通していた。
そんなわけで、この日のプログラムは、まさに水原さん好みの内容だった。
高田元太郎さんは理論派のギタリスト、指導者としても有名だ。なにしろ、専攻が原子物理学だったというから、理論に強いのは頷ける。
物理学的思考能力と音楽は実は密接な関係があり、特にギターの場合はそれが明確だというお話をうかがった。なるほど、と頷くことが多かった。
水原洋さんがつくり、遺してくれたギターで、最高の演奏を聴くことがでた。天国の水原さんもきっと喜んでいるに違いない。
そして、水原ギターが取り持つ縁でつながっている私たち音楽の仲間……演奏家、スタッフ、 そして昨日の客席のみなさん……にとっても、嬉しいコンサートだった。
これも天国にいる水原さんのおかげだ。これからもこのコンサートをつづけていきたいと思っている。
|
◆このごろの斎藤純
|
○顔面神経麻痺はまだ治らなりません。ひと夏、棒に振りました。これから夏休みをとろうと思います。
|
『白い奇跡』/河野智美 を聴きながら
|
 |