<1>は花巻と盛岡のジャズミュージシャンらのビッグバンド(プロも混ざっていた)だが、私は仕事で遅れたため、残念ながら<2>からしか聴いていない。
<2>はまず松永貴志がソロで1曲、それからトリオで1曲、3曲めから寺久保エレナが入った。
寺久保エレナは目をつぶって聴けば高校三年生とはわからない。東京JAZZ2010にも出演していて、その際、インタビュアーの「どういうミュージシャンを目指しているか」という質問に「チャーリー・パーカーのような存在になりたい」と答えている。年長のジャズミュージシャンが聴いたら腰を抜かしそうなことを平然と言うあたりに世代の違いを感じるが、それはともかく、確かにビバップを自分なりに消化していることがプレイを通して、また彼女のオリジナル曲を通して感じられた。
楽々と吹いている姿にも感銘を受けた。私はもう少し寺久保エレナを聴きたかった。
<3>は音数の多い松永貴志とは対極に位置するようなマーク・ヴァン・ローン(ピアノ)のプレイに聴きほれた。実はこのトリオを私はあまり買っていなかったのだが、それはCDを聴いての評価でしかなく、この日ライヴを初めて聴いて己の不明を恥じた。あれだけ音を切りつめ、間を重視した演奏をするには、並外れたセンスの良さはもちろんのこと、相当なリズム感も要するだろう。ベースのフランス・ホーヴァン、ドラムスのロイ・ダッカスがけっこう聴かせるのもライヴならではだった。
<4>は7月8日に一関ベイシーで聴いたばかりだが、あの日と同じように、ヒノテル節を堪能した。現在、日野皓正カルテットはドラムスが決まってなくて、ベイシーでは力武誠だったが、この日はシカゴから呼んだ田中徳崇が叩いた。私の印象では力武誠のほうがこのカルテットには合っているように思った。
いつもの石井彰のピアノ、音楽大学ではチェロを専攻していたという須川崇志のベースは文句なく素晴らしい。日野さんの信頼ぶりも演奏から伝わってくる。
ピアノ・トリオ+ワンホーンのカルテットという演奏形態は、ピアノ・トリオの力量(ことに伴奏にまわったときのピアニストのセンス)とホーン奏者の力量がよくわかるので、私はクインテットよりもよく聴いている。サックスが入っているほうがサウンドが厚くなり、いろいろなこともできると思うが、日野さんはこういう削ぎ落としたカルテットいうスタイルで新たな音楽を追求している。
フリーとメインストリームを区別しないで、スタンダードナンバーにもうまい具合にフリージャズをまぶした演奏だった。日野皓正ならではの世界と言っていい。
最後にアンコールに応えて、出演者全員によるセッションがあった(曲は「Cジャム・ブルース」)。<1>のメンバーが楽しそうに、そして伸び伸びと演奏している姿に客席から大きな拍手が送られた。
実に気持ちのいい演奏だった。
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