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◆ 第234回 低音楽器だけのコンサート(18.October.2010) |
旧第九十銀行創建100周年記念事業 |
〈第1部〉 |
[1]J.バリエール:チェロとコントラバスのためのソナタ |
[2]J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 第2番 |
[3]長谷川恭一:印度の虎狩り |
〈第2部〉 |
[4]ジャン・フランセ:「テーマとバリエーション」 |
[5]J.ゴルターマン:ベッリーニの想い出 |
[6]G.ロッシーニ:チェロとコントラバスのための二重奏曲 |
[アンコール] |
長谷川恭一:印度の虎狩り |
植木昭雄(チェロ)=[1]、[2]、[3]、[5]、[6] 黒木岩寿(コントラバス)=[1]、[3]、「4]、[6] チェロとコントラバスのための曲は少ない。ひとつのコンサートができるくらいあるかどうか。ちなみに[1]は、2台のチェロのための曲だ。 そして、チェロとコントラバスだけのコンサートも、そうめったにあるものではない。かなりマニアックな世界と言っていいかもしれない。 ところが、このコンサートは満員だった。それに、室内楽のコンサートにしては珍しく、若い方の姿も目立った。 いろいろとお話をうかがって、その理由がわかった。 コントラバスの黒木さんは東京芸大に在学中から、岩手大学管弦楽団の指導にいらしていたのだという。会場の若い方たちは黒木さんの指導を受けた、いわで「お弟子さん」たちだった。 もうひとつ驚いたのは、植木さんのご実家のヴァイオリン工房(現在、植木さんはヴァイオリン工房の社長でもある)で、盛岡の松本弦楽器工房を主宰する松本伸さんが長く修行していたのだという。そのころ、植木さんはまだ小学生だったそうだ。 盛岡とは縁の深いお二人ということになる。 さて、[4]はめったに聴くことのできないコントラバスのソロ曲だが、あの楽器をあんなに自由闊達に操れるものなのか、と驚いた(演奏するというよりも、操るといったほうが近いような気がする)。右手は弓と指を使ったありとあらゆる奏法が駆使され、左手はネックの上から下まで忙しく行き来する。そして、奏でられる音楽は私をどこか遠く別の世界に運んでいく。 終演後、弦楽合奏団バディヌリのコトラバス奏者(岩手大学管弦楽部出身なので、黒木さんの指導を受けている)に訊くと、「プロでもあれは弾ける人が限られていますから」と言っていた。いや、それはそうだろう。 [6]では、本来、この二つの楽器からは聴こえてこないはずの音まで響いているように感じられた。けっこう難しそうな曲なのに、お二人は笑みを交わしながら、いかにも楽しそうに演奏していた。音楽と共にその姿も印象に残っている。本物のヴィルトォージティとは、こういうものなのか、と改めて感じ入った。 盛岡市在住の作曲家・編曲家長谷川恭一さんの[3]をお二人はとても気にいったようで、アンコールでも演奏された。この曲は弦楽四重奏がオリジナルだが、チェロとコントラバスによる演奏でも雰囲気たっぷりでおもしろかった。 ちなみに、長谷川さんの作品は一流の音楽家によって、何度も演奏されている。実はクラシックの世界では新作がこのように何度も、さまざまな演奏家によって演奏されることはとても珍しい。それだけ作品に力があるということの証左だ。このことも記しておきたい。 |
◆このごろの斎藤純 |
○今週末、『もりおか映画祭』が開催される。詳しい情報は公式サイトをご覧ください。今年も充実したラインナップです。私もあちこちに出没しますので、見かけたら声をかけてください。 |
ペルト:アルボスを聴きながら |
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