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◆ 第241回 陶器開眼(24.January.2011)

ハンス・コパー展 ― 20世紀陶芸の革新
岩手県立美術館 2010年12月4日[土]-2011年2月13日[日]


 私は平面(絵)以外は守備範囲外なので、展覧会に限らず、自ら進んで陶器を見ることはめったにない。ハンス・コパーも盛岡で暮らしていなかったら、見ることはなかっただろう。盛岡では展覧会が少ないから、さほど興味のない展覧会であっても「ちょっと行ってくるか」といった気持ちで出かけていく。

 行ってよかった。
 なぜなのか理由はよくわからないが、引き寄せられてしまった。一見、とてもシンプルな造形でありながら、実は複雑で繊細な曲面を持っている。
 古代ローマや古代エジプトを下敷きにしている。ところが、ものすごくモダンなのだ。クラシックな造形を追求していくとモダンになるのだろうか。

 ただ、残念なことに、どの作品もガラスケースのガラス越しにしか見られない。1969年にヴィクトリア&アルバート美術館で行なわれた展覧会の写真によると、ガラスケースはなく、台の上に置かれた作品をじかに見ていたことがわかる。時代が違う。もうそういう展示はできないのかもしれないが、実に羨ましい。
 もっと言うなら、できれば両方の手のひらで包みこむように持ってみたかった。そして、作品の表面の感触を肌で味わい、重さを感じてみたかった。ハンス・コパーにはそう思わせる何かがある。

 それを実現するには、オークションなどで入手すればいいのだ。500万円〜700万円くらいで手に入るらしい……やっぱり、私はガラスケース越しに眺めることしかできないようだ。

  ハンス・コパーの展覧会に行って以来、デパートなどで陶器を意識的に見るようになった。私はそういう装飾美術には興味がなく、うちでも大好きな猫の図柄の食器を使っているのだが、何だかお金がかかることに開眼してしまったようだ。

◆このごろの斎藤純

〇自転車にもオートバイにも乗れない冬場の恒例で、ちょっとお腹のまわりが気になっている。

アルヴォ・ペルト:交響曲第4番を聴きながら