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◆ 第243回 「今」を感じさせる音楽(21.February.2011)

Takafumi Kakizaki“K&M” LIVE(もりげきライヴVol.194)
2月16日(水)午後7時開演
もりおか劇場タウンホール

 私はジャンルにとらわれず、さまざまな音楽を聴いているほうだと思うが、それでも当然ながら偏ってくる。ことに、若い人の音楽を聴く機会が少なくて反省している。
 そんなときに、私が最も期待している柿崎幸史さんが率いるバンドのコンサートがあった。

 柿崎さんは岩手大学教育学部音楽科の学生。現在は教職にあるお兄さんも同大学で学んでいて、「岩手大学にはすごい兄弟がいる」と評判だった。
 この日はその柿崎さんが初めてリーダーをつとめるバンドのデビューとあって、客席は満員だった。

【プログラム】(一部の曲について解説を記しておく)。
[1]Coelacanthus(シーラカンス)=かつて岩手大学で教鞭をとっていた、現代音楽の作曲家

山本裕之氏の作曲ゼミで、柿崎さんが最後に見てもらった曲。元はピアノ曲だが、編成に合

わせて書き直したそうだ。
[2]eight=8小節の曲をインプロヴィゼーションで発展させていく。
[3]ikenie(いけにえ)=柿崎さんがが打ち込みで作った曲に、当日ぶっつけ本番で、サック
スがアドリブで入る。さながらサックス奏者が「いけにえ」にされるような実験音楽であること
ら、この題名が付いた。
[4]月の光=ドビュッシーとフォーレの「月の光」をアレンジ。
[5]四つの舞曲の為のテーマ
[6]パントマイム
[7]空の神様=家族同様に可愛がっていた愛犬が亡くなったときにつくった曲。
[8]please call my name
[9]dreamer
[10]A Night In Tunigia=モダンジャズのスタンダードナンバー。珍しいヴォーカル入り。
[アンコール]Hauday


  柿崎さんが中心になってつくりだす音楽は、ジャズでもロックでもなく、ジャズでもロックでもある。クラシックの要素も入っていて、ときにプログレシッヴ・ロックを彷彿させる。
しかし、このバンドのサウンドの大きなバックボーンは、吹奏楽だと思う。
 吹奏楽はふところの深い音楽で、クラシック、ジャズ、フォークロアなどをふんだんに取り入れる。そして、メロディラインがわかりやすい。そういう吹奏楽の要素のいい面が反映されているような気がする。吹奏楽は編成が大きいが、小編成にするとこんなふうになるのかもしれない。

 [5]の解説で柿崎さんは自身の音楽の理想を「カントールとムジクスの両方が入っているもの」と表現した。これは、ものすごく乱暴に解釈すると「理論など理知的な面と、感性など情緒的な面をあわせもった音楽」ということになるだろう。
 演奏を聴きながら私は、柿崎さんの音楽を言葉であらわすなら、「カントール&ムジクスだな」と思っていたところだったので、この言葉を柿崎さんの口から聞いたときは椅子から落ちそうになるほど驚いた。

 [6]からヴォーカルが加わった。といっても柿崎さんのことだから、一筋縄ではいかない。ヴォーカルも楽器のひとつとして扱われるため、歌と伴奏という関係にはならない。

  楽器の演奏レベルに差があるのだが、それが弱点になっていないのは、個々の演奏能力よりもアンサンブル(この場合のアンサンブルには精神的なものも多分に含まれる)を重視しているからだ。メンバー間に我々第三者には窺い知ることのできない信頼関係があるのを充分に感じることができた。
 今後の活動が楽しみだ。

【メンバー】
fl.Aya Kimizuka
sx.Hiroki Terui
tp.Sonoka Sasa
gt.Funky Sasaki
pf.Misuzu Izumiyama
bs.Daisaku Endo
perc.Wakana Takahashi
dr.Takafumi Kakizaki
◆このごろの斎藤純

〇今回紹介したライヴは、盛岡劇場の目玉企画のひとつ「もりげきライヴ」のラインナップとして行なわれた。このライヴはジャンルを問わず、盛岡を中心に活動しているミュージシャンたちにとって少なからぬ支柱となっている。この取り組みにも注目していきたい。
〇ぼちぼち、花粉症の季節がやってくる。今年は昨夏の猛暑の影響で「花粉の当たり年」だそうなので、今から予防に念を入れている。

デラニー&ボニー&フレンズを聴きながら