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◆ 第258回 秋が深まってきた。今年の紅葉は特にきれいだと思う。 (24.October.2011)

 この時期に音楽を聴くと、心にしみることに今さらながら気がついた。何度も聴いているお馴染みの曲でも、新鮮な印象を受けたりする。「芸術の秋」といわれる所以だろう。
 ことに弦楽器の響きがこの季節にふさわしい。
 盛岡の二つの音楽団体の演奏を聴いた。

弦楽合奏団バディヌリ第15回定期演奏会
2011年10月15日(土)午後7時開演
岩手県民会館大ホール

 結成30周年記念を迎えた弦楽合奏団バディヌリの記念演奏会。コンサートマスターの寺崎巌さんの趣味が私と似ているので、毎回、どんな曲を演奏してくれるのか楽しみにしている。今年はまるで私のために選曲してくれたようなプログラムだった。

1.長谷川恭一:平和への讃歌
2.アルビノーニ:弦楽のためのソナタ 作品2-5
3.バッハ:6声のリチェルカーレ(「音楽の捧げ物」から)
4.ウォーロック:組曲「キャプリオール」
5.チャイコフスキー:弦楽セレナーデ

 バディヌリは音色が美しい。響きのバランスがいいのはチームワークのよさのあらわれだろう。メンバーに若干の異動はあるものの、30年も続けてきたことは賞賛に価すると思う。
 名曲にして難曲である5を、バディヌリの演奏で聴けたことが何よりも嬉しかった。今回、特に第2バイオリンとヴィオラの充実ぶりを感じることができた。

 次にラトゥール・カルテットのコンサートについて触れたい。 
「斎藤純と聴く弦楽四重奏の世界」
2011年10月22日(土)午後6時30分開演
岩手町立石神の丘美術館ギャラリーホール

 ラトゥール・カルテットは私が名付け親で、ジョルジュ・ド・ラ・トゥールからいただいた。ちなみにド・ラ・トゥールは20世紀に再評価されるようになった17世紀の画家だ(ファンタン・ラトゥールという19世紀の画家もいるので混同しないでください)。
 3年前にカルテットを結成する際にメンバーから相談を受けたとき、フェルメール・カルテットという有名なカルテットにあやかって、この名を思いついた。
 では、メンバーを紹介しよう。

ヴァイオリン:山口あうい
ヴァイオリン:馬場雅美
ヴィオラ:熊谷啓幸
チェロ:三浦祥子

 弦楽四重奏は多くの場合、演奏会のたびに都合のつくメンバーが集まって演奏される。それも室内楽の魅力のひとつではあるのだが、演奏の深みとなると、やはり固定したメンバーのグループのほうが上回ると思う。固定したメンバーによる弦楽四重奏のグループは地方都市では珍しく、盛岡の室内楽愛好家にとってラトゥール・カルテットの存在意義は決して小さくないと言っていい。
 この日も息の合った演奏を聴かせてくれた。プログラムは下記のとおり。

1.ハイドン:弦楽四重奏曲第35番へ短調 作品20-5(太陽四重奏曲)
2.ボロディン:弦楽四重奏曲第2番ニ長調より第三楽章「ノクターン」
3.長谷川恭一:6つのロマンス
4.『ニューシネマパラダイス』より「トトのテーマ」、「ナタの愛のテーマ」
5.『ドクトル・ジバゴ』より「ララのテーマ」
6.『シェルブールの雨傘』
7.『風と共に去りぬ』より「タラのテーマ」
8.『シンドラーのリスト』
9.『マイフェアレディ』から「踊りあかそう」
アンコール「 オリーブの首飾り」

私はラトゥール・カルテットの演奏で、ハイドンの弦楽四重奏曲のおもしろさを教わった。この日も濃密なハイドンを味わわせてくれた。
 ハイドンは弦楽四重奏という演奏スタイルの生みの親だ。モーツァルトもハイドンの音楽から多くを学び、弦楽四重奏曲の作品をハイドンに献呈しているくらいだ(ハイドン・セットと呼ばれている)。
 プログラムに長谷川恭一さんの作品が必ず入っているのもラトゥール・カルテットの特徴だ。朗読劇のために書かれた作品を、作曲した長谷川さんご自身の解説付きで聴かせていただいた。
 長谷川さんもラトゥール・カルテットの成長ぶりを褒めていた。来年のコンサートも楽しみだ。

◆このごろの斎藤純

〇もりおか映画祭が無事に終わった。今年はいろいろな思いが溢れる映画祭だった。盛岡が元気を発信していくことが、沿岸の復興のエネルギーになる。微力ながら映画祭もその一端を担っていると思う。

「象のババール」を聴きながら