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目と耳のライディングバックナンバー

◆第287回  『ダリ展』を観る(15.Jan.2013)

 マリオス文化ホール展示室で開催中(2月3日まで)の『ダリ展』が好評だ。
ダリをひとことで言うと、奇想天外な発想をリアルに描いた画家だ。発想の点でも技術の点でも天才だった。もう少し付け加えると、発想は大胆で斬新ながら、それを表現する技術は古典に根ざしていた。
 日本でもピカソと並んで人気の高い画家だが、それにしても某プレイガイドの前売り券が開幕前に売り切れたという報せには私も驚いた。
 本展ではダリが1960年代から70年代に制作した石版、銅版、木版、孔版などの版画作品に立体作品10点を加えた計221点を観ることができる。ダリの本領は油彩画にあると思うが、その発想のユニークさは版画作品からも充分に感じられる。
 自由な発想の作品もあるが、マゾッホの小説『毛皮を着たヴィーナス』や、ケルトの伝説『トリスタンとイゾルデ』を題材にしたシリーズもある。エロティックな作品も観られ、総じて大人向きの展覧会だった。
 ダリの本領は油彩画にあると書いたが、立体作品も素晴らしい。小さなものから巨大なものまで、やはり大胆かつユニークな発想を確かな技術で形にしたものばかりだ。本展でも小ぶりながら、いかにもダリらしい作品が展示されている。
 ダリはその独特な作品世界に加えて、奇行でも有名だった。ピンと跳ねた口髭、奇妙ではあったがダンディなファッション……それらは繊細な本性を隠すための「鎧」だったといわれている。作品を子細に観ていると、それがわかるような気がする。
 私は昨年の夏に、裏磐梯にある諸橋美術館に行ってきた。ダリの世界的なコレクションで知られる美術館だ。あの日の「ここではない遠いどこか」へ連れていかれた感覚を、マリオスの『ダリ展』で思い起こした。
〈このごろの斎藤純〉
〇オートバイにもロードバイクにも乗れない冬の間、今年のツーリングやサイクリングの計画を立てることに時間を費やしている。以前は地図をひろげての紙上の旅だったが、今はインターネットの地図だから、バーチャルな旅と言っていいかもしれない。
シベリウス:クレルヴォ交響曲を聴きながら

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