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目と耳のライディングバックナンバー

◆第292回  昔の巨匠を観る(ルーベンス)(25.Mar.2013)

 Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中(4月21日まで)の『ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア』展を観てきた。
 18世紀以前の巨匠とその作品をオールドマスターという。ルーベンス(1577~1640)はオールドマスター中のオールドマスターだ。印象派以降の作品は日本にもいい作品がたくさんあるし、展覧会も数多く開催されるから観る機会に恵まれているが、オールドマスターなると国立西洋美術館でまとまった数の作品が観られるだけで、ぐんと縁遠くなる。だから、こういう機会は絶対に逃せない。
 気がついたことを思いつくままに書いておこう。
ルーベンスが工房を構えて量産していたことはよく知られている(オールドマスターに共通する特徴でもある)が、その工房の弟子たちの作品も一堂に会していて興味深く観た。
 また、ルーベンスが同時代のブリューゲル、スネイデルス、ウィルデンスらと共同で制作した作品と、彼らの単独の作品も展示されていて、これも見応えがあった。
 小さなサイズの油彩画が「スケッチ」として展示されていた。ルーベンスはスケッチの際にも水彩絵の具やインクなどを使わず、油絵の具で描いたのだとわかる。これがタブロー(完成画)と呼んでも差し支えないようなできばえなのだ。
 これはよけいなことだが、実は東京に向かう「はやて」の車中でマゾッホの『毛皮を着たヴィーナス』を読んでいった。この小説にはティツィアーノの絵画が出てくる。本展にティツィアーノの『毛皮をまとった婦人像』をルーベンスが模写した作品が展示されいて、なにか因縁めいたものを感じた。
 オールドマスターは縁遠い存在と書いたが、オールドマスターを観て理解するためにはギリシヤ神話や聖書の知識が求められることも私から遠ざける要因となっている。それでも、オールドマスターを観るのは、私が好きな印象派以降の作品を観るときに発見をもたらしてくれるからだ。
 東京では奇しくも『エル・グレコ展』(東京都美術館で4月7日まで)、『ラファエロ展』(国立西洋美術館で6月2日まで)が開催されている。いずれも貴重な芸術遺産であり、なかなか国外へ持ち出せない作品ばかりだから、これも見逃せない。
〈このごろの斎藤純〉
〇長い冬がようやく終わったという気がしている。去年はいつまでも「冬の感覚」をひきずっていて、季節に変化に乗り遅れてしまった。今年は早取りをしようと思っている。
〇毎週のように重要な会議やイベントがある。うまく息抜きをしないと体も頭ももたない。4月になれば少しは楽になりそうだ(そう思っていて、実際に楽になった試しはないのだが)。
アイリッシュ・ツアー74/ロリー・ギャラガーを聴きながら

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